モータードライブが普及していなかった頃の赤道儀には、手動による微動を行うためのハンドルが付いていた。ハンドルには金属コイルや直棒を用いるタイプがあったが、中でもコイルを用いたフレキシブルハンドル(以下フレキ)は、その利便性から、各社の架台に広く使われていた。
フレキは、長いほど使い易いと思われがちだが、反面、揺れの収まるまでの時間が必要になるので、剛性の小さい架台に長すぎるフレキは良くないと言われていた。この事は、天文ガイドの「望遠鏡をテストする」に、繰り返し書かれていたように記憶している。各社はそれぞれ最適な形状を考えていて、コイルと直棒が組合さった独創的なものも作られていた。
一方、望遠鏡の格好の良さからだけ考えると、赤道儀との接続部から優雅に長く垂れ下がっているものは、とても美しいと感じたものだ。天文雑誌の広告を見て、いつかあのハンドルを操作してみたいと夢見た赤道儀もあった。

手持ちの中から紹介する。上から5本;T社。中の4本;N社。うち2本は黒色塗装されている。また短い方の1本は、直棒である。下の2本;G社。握りの部分の形状は、T社とN社は同じ土星型であるが、G社は若干小ぶりで独特の形をしている。

右;G社。左上;N社である。

右から5本;T社。うち右側3本は微動軸の直径9mm用、2本は直径6mm用である。

各社の取付状況である。この画像にあるT社の赤経用フレキは、G社とN社に比べると若干短いが、カタログを見るともっと長いものもあったようだ。
フレキの操作感覚は、独特である。握りを持ち、手首をゆっくりひねっていくと、ややあって視野がじわっと動いてくる。これはコイルの弾性と架台内の摩擦現象が、関係しているのであろう。
現在、手動式赤道儀用のフレキは、まさに絶滅危惧種だと思う。長焦点屈折で観望する際には、これがないと五十肩になってしまうので、大切に使って行きたい。