大倉草紙

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【京都】 京と江戸 ―名所遊楽の世界― (細見美術館)

2008年10月03日 18時34分54秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
10月1日(水)
当日の行程:(京都市営地下鉄・東山駅) → 【「生活と芸術―アーツ&クラフツ展」ウィリアム・モリスから民芸まで(京都国立近代美術館)】【京と江戸 ―名所遊楽の世界―(細見美術館)】 → (京都市営地下鉄・東山駅~京都駅) → 【印象派の巨匠ピサロ ―家族と仲間たち― 展(美術館「えき」KYOTO)】


          

細見美術館で、11月3日まで、「京(みやこ)と江戸 ―名所遊楽の世界―」展が開かれている。
展覧会は「賑わいの都 都市図屏風とその周辺」「都市の遊び ―街に繰り出す人々」「都市風俗のさまざま ―遊楽のファッション―」の3部構成。
図屏風を中心に、全部で22点の美術品が展示されている。

都市を描いた図屏風は、いつ観ても楽しい。
このお寺は、この神社は、この塔は、この通りは、この川は、この橋は……と、あたりをつけながら眺めたり、へんてこりんな動きをしている人物を見つけたり。


   
   「年中行事図巻」より『重陽』・冷泉為恭 天保14年(1843)

「年中行事図巻」のように、昔の風俗が読み取れるものを観るのも楽しい。
『重陽』の菊の花には、綿が被せてある。
『菊の花 若ゆばかりに袖ふれて 花のあるじに 千代はゆづらむ』(紫式部)
また、『枕草子』にも着せ綿について記されているが、文字ではなく図で示されると、再確認できたような気がしてなぜだか嬉しい。


   
       「蝶々踊り図屏風」(部分)小沢華嶽 江戸後期

展示室には、わたしひとりだったので、腹を抱えて笑いたくなった。
入口で見た「防犯ビデオを設置しています」の文字が頭をよぎり、慌ててまじめな顔になる。
「蝶々踊り」とは、天保10年(1839)に流行った狂乱騒ぎで、人々が動物や野菜の着ぐるみに身を包み、踊りながら京都から今宮社をめざしたのだという。
カエル、大根、傘……あぁ、どの着ぐるみも強烈だ。
こんなこと本当にしたのだろうか、と思ってしまうほどの徹底ぶり。


「犬追物図屏風」(江戸前期)は、右側3曲が準備の様子、左側3曲が犬追物の様子が描かれている。
綱で引っ張られたり、懐に抱かれたりして会場に連れて行かれる犬たちは、これから何が行われるのか分かっているのだろう。
足を踏ん張って抵抗している犬もいる。
犬を傷つけないように先が丸くなった矢を用いるそうだが、それだって、いやだろうなあ。


「四条河原図巻」(江戸前期)も、観ていてわくわくする。
相撲、人形浄瑠璃、若衆歌舞伎を楽しむ人々。
見世物も多く出ていて、それらを詳しく観ていると、自分が実際に見世物を見ている気分になる。
アシカの見世物、猿曳、孔雀の見世物、虎の見世物、熊の見世物、犬の芸、鷲の見世物……実に多様だ。

山東京伝の「江戸風俗図巻」(文化5年〔1808〕)もあった。
江戸の人々の装いが、職業別に描かれている。
夜鷹(最下層の女郎)は、手ぬぐいで頬っ被りをしていて、本当にこんな格好をしていたのだろうかと可笑しくなる。
ほかには、寺社に参詣する姑、乳母、町屋の下女、田舎娘、深川の女郎、若後家、芸者、箱入娘、回者(妾)、品川の女郎、吉原の花魁、神子が描かれている。
洒落本と黄表紙を数多く残した山東京伝らしく、遊び心溢れる粋な図巻だ。

それから、「伊勢海老蒔絵提重」も忘れられない。
こんなのを持って、紅葉狩りに出かけたいものだ。

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