シロ猫ピッピの「おいら物語」

生死をさまようガン闘病中に人間の言葉がわかるようになったシロ猫ピッピの物語。ニュージーランドからお送りしています!

Vol.0178■アニキの失踪

2006-07-21 | アニキ物語
新しい家ね~。
はっきり言って慣れたよ。
けっこう柔軟なんだ、おいらたち。
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おいらたちが引越してきたのは、まだ明るい時間だった。
「いいじゃない、明るくて。」
とアイツが喜んでたからな。おいらたちはそれどころじゃない。明るくても暗くてもどうでもいい。
ニャー (前の家に帰してくれ!)」
と腹の底から鳴き続けた。

でも、通じるわけない。通じたところで、おいらたちの言うことをきくわけない。いつも四つ足が二本足の言うことをきいて、その逆はないんだ。あんまり鳴いてさすがに疲れた。歩き回るのも恐ろしい。おいらはそのへんの開いてるキャビネットに入った。

そこにはデカいバッグが入ってて隠れられた。二本足が全然見えないところに行きたいわけでもない。こんな知らないところで、アイツらまで見えなくなったら、それはそれでもっと大変だ。でも、とにかく隠れられるところにいたかった。ソファーにゴロンとする気になんか全然なれない。

「やっだー!見てよ、ピッピ。これこそ頭隠して尻隠さずね!」
と通りかかったアイツが笑う。頭がどうしたって?
「それでも目いっぱい隠れてるつもりなんじゃないか。顔だけあっち向けてさ!」
と連れ合いも出てきた。2人とも楽しそうな声だ。ほっといてくれよ!

アニキは家の中をひととおり見終わってから、ソファーの上でじっとしていた。物がゴチャゴチャしている間にアニキの好きな毛布が置いてあった。アイツがアニキをそこに連れて行くと、そのまま座り込んだ。やっぱりアニキはネコがいい。

二本足は大人も子どももみんなでガタガタやってた。聞きなれない音もおいらにはイヤだった。ホントになんでこんなところに来ちまったんだ? どうして前の家じゃいけないんだ? そのとき小さい子が、
「外行ってきまーす!」
と言って、サンデッキに出るドアを開けようとした。
(←なんでこんなとこに連れて来たんだよー)

「チャッチャも出る?」
とアニキに話しかけてる声がする。
「ママー、チャッチャお外に出してもいいの?」
と聞いてる。

「大丈夫かしら?迷子にならないかな?」
と言いながらも、アイツの頭の中のテレビには、
「庭からは出ないでしょう。そんなに遠くには行かないだろうし・・・」
と映ってた。アニキにもわかったはずだ。

「あっ、出ちゃった。」
小さい子が言った。アニキはデッキのにおいを確認してから階段をゆっくり降りていき、その後、何かを見つけたのか急に走り出して、おいらの交信がよく届かないところに行っちまったんだ。
(つづく)