New Yorkのジャズピアニスト、クニ三上(Kuni Mikami)のブログ

ツアーの様子を中心にお伝えしています。

ライオネル・ハンプトン国際ジャズ・フェスティバル

2011-03-01 13:16:00 | New York
 私にとって今回でおそらく20回目の参加になるこのフェスティバルは、アメリカ北西部、アイダホ州の大学のフットボール用巨大ドームを会場としている。

 開催は2月末なので雪による飛行機の欠航や遅延が生じやすく、昨年は乗り継ぎのシアトルで余儀なく1泊させられた。今年も帰りに地元の空港が雪で閉鎖、大慌てで隣町の空港へ向かった。隣町は車で40分しか離れていないのに、雪は全然無かった。

 普段は人口1万人の大学町Moscoe(発音はモスコー)は、このジャズフェスティバルの時だけ人口が倍の2万人となる。初めて訪れた20年前と景色にあまり変化がなく、スーパーマーケットの品々はNYの三分の二の値段だ。

 今回の大きな変化はハンプトン楽団のドラマー、ウォーリー・ゲーターが昨年他界してしまった事だ。私とは入団時期が近く、ハンプトン楽団以外にも、キャブ・キャロウェイ楽団やエリントン楽団の演奏でも一緒になる事が多く、CDも一緒に作った仲良しだった。(HP「ギャラリー」ページのショートムービー「New Arrival」にも出演しています)

 2日目土曜日の演奏の前には、彼とそして昨年亡くなったハンク・ジョーンズ氏、ジェイムス・ムーディー氏(両者共このフェスティバルの常連ゲストだった)の追悼の映像が会場に流れた。

 このフェスティバルのおかげで、これまで私も本当に沢山のベテラン演奏家や歌手達と出合ったが、今年も初日金曜日にはマンハッタン・トランスファーの演奏があった。さすが年季の入ったコーラスで、ヒット曲を中心に披露し、彼等の全盛時代を知っているアメリカ人の団塊年代層に非常に受けていた。

 後半はエレキ・ベースのヴィクター・ウートン(Victor Wooten)。彼の音楽は初めて聴いたが、ビートの変幻自在さとオリジナリティには驚いた。グラミー賞を何度も受けているのも納得できる。「これからは16ビートが進化して32ビートになるよね」と知人と話していた矢先に、ジャズの範疇を超えた、時代の最先端のリズム感覚を体感したわけである。

 翌土曜日には我々、ハンプの楽団が30年代の曲をやった。どちらにも共通しているのは人々の身体をスイングさせるパワーを持つ音楽である、という点だ。ジャズは、その原初からのグルーヴを維持しながらも、表現形式は進化しているのが判る。


ステージに飾られたハンプトンの銅像