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告訴取り下げで不起訴・沖縄の米兵・地位協定改定、政府は建設的提案を

2008-04-03 | 沖縄問題
毎日新聞の[記者の目読者の目]の3月5日の記事と4月2日の記事を読んで、暗澹たる気持ちになりました。よく考えてから、それぞれの問題点を後日まとめてみたいと思います。レイプ、米軍海兵隊、地位協定、日米安保条約、沖縄、アメリカ、日本政府など。3月11日以来この問題をずーっと考えてきました。カテゴリーの『沖縄問題』(本当は、沖縄の問題ではなくて真に日本政府のあり方の問題そしてもっと本質的に言えばアメリカ帝国主義の世界戦略の問題)を参照してください。

告訴取り下げで不起訴・沖縄の米兵=三森輝久(那覇支局)

 ◇積み重なる矛盾、解消図れ――親告罪、見直しできぬか
 沖縄県で中学生の少女に暴行したとして逮捕された在沖縄米海兵隊員は、少女の告訴取り下げで那覇地検が不起訴処分とし、釈放された。私は当初から事件が「基地問題=沖縄問題」として矮小(わいしょう)化されはしないか、と懸念を抱きながら取材をしてきた。そして今、その懸念が現実化したことに加え、被害者が泣き寝入りせざるを得なくなった結果に、言いようのないむなしさを感じている。
 発生の一報に「またか」と思った。沖縄の基地問題が大きく動くきっかけになった95年の少女暴行事件以降も、米兵やその家族、軍属による女性暴行事件は14件(沖縄県警まとめ)起きた。私自身、沖縄に赴任して3年近くになるが、米兵による女児への強制わいせつ事件の取材を経験した。
 沖縄で米兵による犯罪が絶えない最大の理由は、日本国土の0・6%の面積しかない沖縄に米軍専用施設の75%近くが集中し続けているからだ。在日米軍の軍人、軍属、家族は9万4217人。このうち48%にあたる4万4963人が沖縄にいる。こうした本土と沖縄の圧倒的な「不均衡」に加え、米兵の犯罪や基地移転を巡る交渉が常に外交・政治問題として「沖縄対政府」の図式にされてきたことで、本土から離れた「沖縄問題」というイメージを生み、国民の関心に広がりを欠いてきた。
 私はかねて沖縄問題は日本という国の公正さを問う問題だと考えてきた。この国は沖縄を戦時中に「捨て石」とした揚げ句に、本土から切り離して先に独立を果たし、沖縄復帰後も米軍基地の大幅返還には消極的だ。一地方に過酷な歴史を負わせ続ける理由は、日本が不公正な国だからとしか、考えようがない。政府が「沖縄の負担軽減になる」という米軍再編が実現しても、沖縄には依然として約70%の基地が残る。日米安保の枠組みがある以上、私は沖縄の米軍基地の相当数を本土が引き受けなければならないと考える。
 事情聴取や裁判での証言、そして報道被害やネットの書き込みなどによる心ない中傷は、被害を受けた女性にとって事件を再び思い起こさせ、「セカンドレイプ」と呼ばれる。少女は那覇地検に「もうかかわりたくない。そっとしておいてほしい」と話したという。思春期の少女に、こうしたセカンドレイプに耐えろと言うのは酷な話だ。
 強姦罪が親告罪である理由は、加害者に対する被害者の処罰意思を国家の刑罰権より優先しているからだ。被害者の意思を無視して国家が捜査を進めることが、周囲の目や捜査協力、心の傷に悩む被害者をさらに傷つけかねないという理屈だが、今回の事件は「処罰意思優先」の論理が逆に少女を追い込み、司法による真相解明の道を閉ざす結果になったと言えないか。ジレンマはあるが、これを機に親告罪のあり方を見直すことはできないだろうか。
 沖縄に限らず、基地を抱える自治体では、容疑者の米兵が基地に逃げ込み、日本側が起訴するまでその身柄が引き渡されない例が度々問題化してきた。日米地位協定の壁である。ただ、今回は沖縄県警が海兵隊員を逮捕し、その壁はなかった。にもかかわらず、捜査権は米軍に渡った。皮肉な結果に、どうしようもない閉塞(へいそく)感が沖縄にはある。
 日本政府は再発防止策を急ぐが、それで事件がなくなると考える人はいないだろう。国民の多くが日米安保を必要と考えながら、安保による痛みを沖縄に負わせ続け、共有しようとしない矛盾。そして女性や子供が被害者になりながら、国内法の下で審理できない矛盾。今回の事件は二つの矛盾を突きつけている


地位協定改定、政府は建設的提案を=上野央絵(政治部)

 ◇健全な日米同盟、築くため――「片務的」理由に萎縮、変だ
 なぜ沖縄の人たちは日米地位協定の改定を求め続け、政府は拒否し続けるのか。
地位協定は日米安保条約に基づく駐留米軍の基地使用と米軍関係者の法的地位を定め、国内法の適用除外や免税など種々の特権を認めている。95年の少女暴行事件で象徴的存在となった容疑者の起訴前の身柄引き渡し問題。基地内の廃棄物による環境汚染に対し米側に回復義務がないこと。米軍ヘリ事故で県警の現場検証が拒否される――。県は問題点が明らかになるたび、協定改定を政府に求めてきた。今回も、外国人登録を免除しているため基地外居住者の実態が把握できないという新たな問題が浮上した。正に「パンドラの箱」(外務省筋)で、沖縄の改定要求は基地集中の現状に対する告発なのだ。
 では、政府が協定改定を拒否するのはなぜか。政府・与党関係者の意見を要約すると「米国が嫌がるから」の萎縮(いしゅく)だ。「他の駐留米軍受け入れ国に波及する」が表向きの理由だが、ドイツや韓国は過去、米国と改定交渉をしている。
 「片務的」とは、日本有事に米国が日本を守る義務はあるが、米国有事に日本が米国を守る義務はないことを指す。その代わり基地を提供し、他の受け入れ国中最高額の駐留米軍経費を「思いやり予算」として負担している。自民党国防族議員は「集団的自衛権行使を認めて対等に守り合う関係になれば、基地を置いて守ってもらう必要はなくなる」と指摘する。
 日米安保体制の始まりは52年の独立だ。日本は戦争放棄の憲法の下で沖縄を米軍占領下に切り離し、米軍に「守ってもらう」道を選んだ。基地の大幅縮小と憲法改正がリンクするジレンマを、県民大会に保守系首長として参加した翁長雄志(おながたけし)那覇市長は「日米安保体制のひずみ」と指摘し「沖縄の基地問題の解決なくして日本の自立はない」と訴えた。
私は米国に求められるままの集団的自衛権行使には賛成できない。「健全な日米同盟」に向けた建設的な提案として、改定交渉を米側に持ちかけてはどうか。福田康夫首相は協定改定を言下に否定し、民主党の小沢一郎代表は「日米同盟を本当の対等な関係にすべきだ」と語るのみだが。
 仲井真弘多(なかいまひろかず)知事は県民大会には参加しなかったが、地位協定改定を求めるための訪米を9月に予定している。米軍絡みの事件事故が減らない限り、沖縄の協定改定を求める声はやまないだろう。真摯(しんし)に応えなければ、日米安保体制はいつでも爆発する可能性を秘めたマグマを抱え続ける。
全文でなく一部省略しました。
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