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国際シンポジウム「ナクバとヒロシマ」(広島)に出席して

2008-12-30 23:20:52 | 中東関連

Rosemary Sayigh(الصايغ)

広島ではレバノンの人類学者ローズマリー・サーイグ女史が「ヒ
ロシマとナクバは破壊と新たな覇権を示す刻印」と題して講演を
行った。女史は平和資料記念館に案内され、パレスチナ人のナク
バの場合と比較して大きな相違があることに衝撃を受けたようで
あった。ナクバの場合は特定の場所があるわけではなく、記念の
日時も決まっていないし、まして整備された記念館はないからで
ある。そして破壊の規模、直後からのメディアの関心、調査や出
版の状況など顕著な相違について述べ、歴史上の「大きな」事件
と「小さな」事件と区別されるかもしれない、しかしそれは表層
的な見方でしかない、と続けた。

サーイグはヒロシマとナクバに共通する最も重要な点は、背後に
アメリカとイスラエルの選民主義(exceptionalism)と人種差別
があることと指摘した。自らを本質的に正しく、「選ばれた」存
在とみなす体質があり、敵対する者はあくまで「他者」であって、
この敵を破壊する権利を神から与えられており、目的を達するた
めには手段を選ばない、そのようなことができる例外的な存在で
ある、という考え方である。

また、ナクバ(大惨事)をもたらした背後には、シオニズム運動
の側に当初から民族浄化の意図があったことがイスラエルの学者
パペによって明らかになっている。そしてナクバは一回の出来事
ではなく今も継続し、分離壁やイスラエル人の入植地拡大、厳し
い検問などによって居住地、生産手段、社会サービスなどの面で
追い詰められている(これをスペイシオサイドという。サリー・
ハナフィー)。

最後に女史はまとめて、現地に身を置く者として「平和運動家が
集合して、権力に対する抵抗を覚え、方法を学び、動員するため
の特別な空間や時間が本当に必要である」と述べた。また、記憶
は抑圧に対する抵抗の基礎として重要である、とも語った。

パネリスト鵜飼哲(一橋大)は、ヒロシマとナクバは共に「近い
将来に加害者から被害者への謝罪があるとは考えられない」とい
う点で共通している、と指摘した。

この国際シンポジウムは、日本の大学のイスラーム専門家が横断
的に連携して中東の学者を招いて主催したもので、英文の予稿集
(225頁)が配られた。広島の部会には160名が出席し、関心の高さ
を示すものとなった。

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