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神学者がみた「聖書の読み方」

2006-03-01 01:09:48 | モルモン教関連
人々はどのように聖書を読んでいるのだろうか。
聖書批評学者ロバート・M・プライスは、「物語
の叙述の世界」に入って登場人物の語り(ナレ
ーション)に励まされ、教化を受ける姿が考え
られると言う。

聖書に記されているイスラエル救済の歴史の個
々の場面をいわばドラマと見て、読者は現実の
生活でその登場人物(例えば主役)を演じよう
とする。そのとき人は幸福な結末に至るシナリ
オを選んでそれが実現できるように努力する。

信仰者は自分が物語の中の人物を演じていると
思うときに、目標を目指して生きる力を得るの
ではないか。何かを達成しようと努力するのを
あきらめれば、人生は意味を失う。信者にとっ
て生きていく意味は「叙述の世界」(物語の場
面)を、この困難で曖昧な現実の生活に重ねる
ことによってもたらされる面がある。

さらにプライスは解説して言う。聖典の中には
預言者や使徒の名を借りた書(ダニエル書、新
約の書簡の一部など)もあるが、知的な読者は
「進んで不信(詮索)を一時停止」させ「詩的
な信仰」(コールリッジの表現)にひたって、
健全で啓発的な影響を享受するのである。

そしてプライスによれば、旧約聖書でヒルキヤ
が神殿で律法の書を見つけたというのは(列王
下22章)、実は発見したのではなくヒルキヤな
ど申命記学派が創り出したものであった。ジョ
セフ・スミスが行ったことも同様で、ダニエル
書、申命記、牧会書簡など古代の偽典作者の仲
間に入るのである。

新しい聖典の創出に当たり、スミスは聖書を資
料としてそれに新しい解釈を施し、宗教的な物
語を生み出したと考えることができる。これは
正に古代のラビや福音書の著者が行ったことと
変わりがない。このように考えれば、主流派の
聖書学者もモルモン書の研究者も歩み寄ること
ができる。聖書学者はモルモン書が聖書とよく
似た種類のものであって、同様に尊重すべき書
物であると認識しなければならないし、モルモ
ン教徒はモルモン書がジョセフ・スミスの手に
なる現代の偽典である可能性を受け入れなけれ
ばならない、プライスはこのように結んでいる。

出典: Robert M. Price, “Prophecy and
Palimpsest,” Dialogue (Fall 2002)
 Robert M. Price, “Joseph Smith: Inspired
Author of the Book of Mormon,” in Dan Vogel
& Brent Lee Metcalfe ed., “American Apocrypha”
Signature Books 2002
 Robert M. Price, “Joseph Smith in the Book
of Mormon,” Dialogue (Winter 2003)


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19 コメント

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物語の重要性(榊原康夫) (NJWindow)
2006-03-01 01:25:40
1970年代に読んだ榊原康夫の本にも、物語の暗記が大切である、と書かれたいた。



 「聖書の勉強で何よりも必要なのは、聖書の

 しるしているストーリーを覚えること、これ

 が最も大事なことです。」

 「現実の生活で必要なことは、これまでに歩

 んできた聖典の中の先輩たちの行程を見なが

 ら耐え忍んで走ることです。(ヘブル12:1)」



 榊原康夫「聖書読解術」いのちのことば社 '70
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プライスの言うとおりにならない理由 (トゥゲザー)
2006-03-01 02:35:55


>モルモン教徒はモルモン書がジョセフ・スミスの

>手になる現代の偽典である可能性を受け入れ

>なければならない、プライスはこのように結んでいる。



あーこれね、これは無理でしょう。

モルモン教会は「真実」「事実」だからモルモン書を

受け入れよ、受け入れたならそれを態度で示すため

全収入の10%を献金せよ、と要求する宗教ビジネス

団体です。

手品師にとってタネあかしが廃業を意味するのと

同じで、モルモン教会(とその幹部)はモルモン書が

JSの創作であることを口にすることはありません。



もっとも本気でモルモン史や学術的研究にとりくめば

モルモン書が創作であることはすぐに見えてきます。

モルモン書がJSの創作物であることを知った人間は

もっと積極的に周囲に伝えるべきであると思います。



しかし、タチが悪いのは、自分自身はモルモン書が

真実でないことを知っていながら、決して口にださず、

さも善良な信仰者のフリをして日曜学校で教えたり、

証を述べている偽善者連中です。

(オムナイや誰豚)



彼らは自分の不道徳や不真面目さ、無気力さを

モルモン書が真実でないことで免罪する一方、

真面目に信じている会員に対しては、自分が信じても

いない教義をしたり顔で教えています。



モルモンをやめて普通のキリスト教会に行きだした人

から、モルモン教義のデタラメさを指摘を受けたとき

彼ら偽善者の一人が、「聖書は事実なんですか? 

処女が身篭るんですか? 科学的にありえるんですか?」

と逆切れしていたみっともない姿を思い出します。

(そのくせ、日曜学校教師をきどった掲示板を開いている)



彼らにとってモルモン書が実は創作であるという

真実は、モルモン社会の中で他人を出し抜くために

他言してはならない秘密なのです。



ひたすら献金収入を追及している教会(幹部)と、

偽善者モルモン会員、この2つの障害を除去せずに

プライス氏の言葉が実現することはないと思います。

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Unknown (Unknown)
2006-03-02 00:15:42
>新しい聖典の創出に当たり、スミスは聖書を資

料としてそれに新しい解釈を施し、宗教的な物

語を生み出したと考えることができる。



これを教義として宣言して組織の分裂を招くか幹部と会員の認識の乖離の度を深めるか。

いずれにしても世代単位の避けられない論理転換だろう。



現代モルモンの停滞を見れば古代キリスト教は柔軟な宗教だったと思う。
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lds側にも偽典性を認める学者 (NJWindow)
2006-03-03 22:37:35
>モルモン教徒はモルモン書がジョセフ・スミスの

>手になる現代の偽典である可能性を受け入れ

>なければならない



これは既に1970年代後半にその萌芽が見えます。特にBYUのトルーマン・G・マドセンが編集した「ユダヤ・キリスト教に類似したモルモにズムの考察」(1978年BYU宗教研究センター)によく見てとることができます。また、モルモンフォーラム19号、「モルモン書に対する聖書学者の視点」も参照してください。



ごく少数であっても、BofMに偽典の特徴を認める視点がldsの学者の中にも出始めています。
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学者と言うからには (トゥゲザー)
2006-03-04 22:13:13
>ごく少数であっても、BofMに偽典の特徴を認める視点がldsの学者の中にも出始めています。



ldsの学者というのはそんなレベルの低さなのでしょうか?

モルモン書は創作であることを認めた上で、それを元に新たな神学を提示することができて初めて学者と言えると思います。



返信する
それが難しい環境であることは・・ (NJWindow)
2006-03-04 22:36:02
>・・であることを認めた上で、それを元に新たな神学を提示することが・・



これが難しい環境にあることはトゥゲザーさんもよく知っておられるところです。すぐ上でUnknownさんが書いているように「世代単位」の時間を要する事柄であると思います。



(もうだいぶ前のことですが、私もBofMの偽典性に言及することをほのめかしたとき、数代前のステーク会長から懲戒の可能性をちらつかされたことがありました。)



あるいは逆に最近数十年のリベラルなlds学者の状況を見ていると案外速い変化が期待されるかもしれません。BYU外のことですが。
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末日聖徒の知識人 (トゥゲザー)
2006-03-04 23:20:41
モルモンへの改宗者というのは、もともと子供のときから進化論を学び、予言者に従うことではなく自分で考え行動することを教えられ、戒めを守ることではなく(他人に迷惑をかけないなら)自由に行動することを許されてきた人たちです。



しかしモルモン教会に入るときに、進化論は人間の知恵による間違いなので受け入れないこと、自分の考えのままに行動するのではなく神の予言者の勧告に耳を傾けること、神の戒めを堅固に守りこの世よりも高い標準で生活することを求められてきました。



それが真理に従う生き方だとモルモン教会は説いています。



しかし末日聖徒の知識人と呼ばれる前衛的な教会員たちは進化論を受け入れており、生ける予言者が述べていた古い考え方にとらわれない意見をもち、戒めは守れる範囲で無理をしないらしいです。そしてその方向にモルモン教会自体が向かっているとも言います。



改宗者がモルモン教会に入るときに捨てさせられた考え方、生き方に教会は向かっているのです。逆に教会が改宗者に求めてきた考え方、生き方は実は古い考え方で間違ったことなのだと、末日聖徒の知識人は述べているようです。



これがいかに、ふざけたことであり、改宗者を馬鹿にしていることか末日聖徒の知識人は認識すべきです。



末日聖徒の知識人がすべきことは、モルモンの諸問題を会員の責任だといったミスリードの指摘することではなく、会員に間違った行動を要求している存在(ソルトレークの老人たち)に明確な意思表示をすることです。



これをせずにモルモン教の将来だの、展望だの、教義だのを語っても所詮は偽善者の戯言に過ぎないのではないかと私は思うのです。

返信する
さらに、すべきことは (トゥゲザー)
2006-03-05 08:36:32
一部の無知蒙昧な末日聖徒が平気で口にしている「妄想」が、事実ではないとたしなめることもモルモン知識人に求められている

重要な役割ではないでしょうか?



もちろん末日聖徒がそうした間違いを信じ込んでいるのは

教会本体が原因なのですが、彼らが嬉しそうに語っていることは

真理ではないことを機会あるごとに伝え、たしなめ、啓蒙していく

責任が、真実を知った者にはあるはずです。



ある末日聖徒の掲示板で以下のような馬鹿げたやりとりが交わされていました。



----------------------------------------------

>  大背教は本当に起こったのでしょうか?



はい、そうです。

一般的にはいわゆる中世ヨーロッパや世界各地の暗黒時代がその絶頂だったのではないでしょうか。



しかしキリストの教会の回復はジョセフ・スミスを通して突然成されたわけではありません。背教の場合と同じように徐々に行われたのでしょう。

ルターに代表される宗教改革も回復の基礎作りとして霊感された神様の影響力の一つであると教会では教えられています。

----------------------------------------------



lds教会が教えている「大背教」や「回復」などは正に

「妄想」であり、現実のものではありません。

(むしろモルモン書に記載された悪魔の大教会の特徴が

実際のlds教会に散見されるのは皮肉なことです)



末日聖徒が妄想を信じ込んでいる責任はlds教会本体にあります。

しかしそれでも彼らが妄想を語るのを放置しておくならば、

(それが末日聖徒たちから支持されなくなることを恐れてのものであれば、尚更)

モルモン知識人は単なる偽善者ではないでしょうか?

返信する
Unknown (あんのうん)
2006-03-05 09:31:30
>私もBofMの偽典性に言及することをほのめかしたとき、数代前のステーク会長から懲戒の可能性をちらつかされた



アホな指導者は一向に減っていないということか。

監督、ステーク会長の罷免動議が一般会員には認められない。(支持の挙手は全くの茶番、下手に不支持の挙手しようものならこちらが処分されかねない。)中央の意向を受けた御目付指導者だらけになるわけだ。

体制が変わることがあるとすれば大館長を含めた中央幹部すべてに定年・引退制を導入がキーになるだろう。本来ベンソン時代に制度化すべきだったが彼自ら先見性のなさを身をもって露呈させてしまった。同時に十二使徒の機能不全も。モルモンに体制的な変化が起こるとすれば教会の財政難またはスキャンダルを含めた外圧以外には考えられない。中央が変わらねば地方は変わるきっかけすら与えられない。

暇人は塩野七生「ローマ人の物語Ⅰ」でも読んでみたら。古代ローマのモルモンとの対照ぶりが味わえる。



>これがいかに、ふざけたことであり

>末日聖徒の知識人がすべきこと



いづれも主観から出たものだろうが知識人(この定義がよく分からんが)からすれば「お前こそふざけるな」だな。

小学校のホームルームじゃないんだからさ。

彼らは彼らの都合で研究してるわけね。

モルモン改宗者も自分の都合で教会に所属しているわけだ。

あなたとあなたが知識人と称する人たちとのつながりは同じ教会に所属しているくらいでしょう。

そこには何の責任義務の関係はない。

そこへきて相手に「何をすべき」なんて発言がそもそも甘えもいいとこだ。

改宗者は騙された、翻弄されただのえらい剣幕な書きっぷりだが改宗者が最も教会に対する拒否権を発動しやすい立場にもあるわけだ。

被害者面はやめて貰いたいね。



>モルモン教の将来だの、展望だの、教義だのを語っても所詮は偽善者の戯言に過ぎないのではないかと私は思うのです。



いや君の論からしてそもそも戯言だと私は思っている。



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ウザイよ (トゥゲザー)
2006-03-05 13:10:30
>いや君の論からしてそもそも戯言だと私は思っている。



誰も相手にしてくれないからって私にからんでこないでくださいね。

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