中西嘉宏『ミャンマー現代史』(岩波新書)を読む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/a3/2dc5bf727ca862183b8ea46307f9ae5d.jpg)
ひとつのデモクラシーがはかなくも崩れ去っていった。
――2021年におきた軍事クーデター以降、厳しい弾圧が今も続くミャンマー。
軍の目的は? アウンサンスーチーはなぜクーデターを防げなかった?
国際社会はなぜ事態を収束させられない?
暴力と分断が連鎖する現代史の困難が集約されたその歩みを構造的に読み解く。
1988年から現在までのミャンマー現代史をまとめた著作です。
1988年クーデターで軍事政権のトップに立ったタンシュエについては、
ベネディクト・ロジャーズ著/秋元 由紀 訳/根本 敬 解説
『ビルマの独裁者 タンシュエ』(白水社)を読んでいたのですが、
ステレオタイプな軍事政権指導者という印象しか残りませんでした。
タンシュエ軍事政権下ミャンマーのレポとしては、
高野秀行『ミャンマーの柳生一族』(講談社文庫)を読みましたが、
これは読み物としては面白いのですが、
ミャンマーについてぼんやりと把握した程度でした。
2011年の民政移管から2016年総選挙でのスーチー政権誕生、
そして2021年クーデターと、メディアでニュースを追いかけることはあっても、
まとまった形で知識を整理する機会がありませんでした。
そんな中、手に取ったのが本書です。
軍事政権を一方的に軍を悪と断ずるわけでもなく、
スーチーを代表とする民主化勢力を賛美することもなく、
客観的に、冷静に分析しているところは、さすが学者さんです。
軍事政権では各省幹部ポストが軍人の「天下り先」になっていたこと、
スーチーを党首とする政党NLD結成時の中心人物が軍の元最高幹部だったりと、
支配エリートである軍人の存在が大きな位置を占めていることがわかります。
また、軍は一枚岩ではないこともわかります。
著者の中西氏は京都大学東南アジア地域研究研究所の准教授。
(「地域研究研究所」と「研究」が2つ続きますが、間違いではありません)
アウンサンスーチーは京都大学東南アジア研究センターの
客員研究員として来日していました。
東南アジア地域研究研究所は東南アジア研究センターの後身です。
次は『ロヒンギャ危機―「民族浄化」の真相』(中公新書)を読むことにします。
順番は逆になりましたが。
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