予備校で講義を行う「政治学」のレジュメを作っています。
今年の講義は、テキストの順番どおりに進めることにしました。
古代ギリシアの政治思想から始まり、社会契約説に続くため、
教養科目の「思想」と同じような内容になります。
それが吉と出るか凶と出るか。
第1回の講義終了後、受講生にアンケート調査が行われます。
講義の評価が悪ければ、報酬にも影響します。
それでも政治思想から講義を始める理由は、
テキストの順番というだけではなく、
憲法の意義を再確認してもらうためです。
憲法は、近代市民革命によって生み出されたものです。
憲法には基本的人権について規定されていますが、
近代以前の社会には、「基本的人権」という概念はありませんでした。
身分制社会では、身分ごとの「特権」が基本となります。
国王には国王の特権(国王大権といいます)。
貴族には貴族の特権。
農奴には農奴の特権。
「農奴の特権」といっても、
「同じ土地で一生農業に従事する特権」というものです。
逆に言えば、「一生同じ土地で農業しかできない」のであり、
職業選択の自由や移動の自由はありませんでした。
身分制社会の常識であった、身分ごとの特権を取り払い、
すべての人が自由で平等な人権を持つ社会をつくること。
それが、近代市民革命なのです。
私は、講師の仕事を通じて、受講生に教えるだけでなく、
自分自身も学びを深めるよう心がけています。
公務員の仕事は、憲法が基本になります。
公務員志望者には、憲法の意義を理解した上で、
試験に臨んでいただきたいものです。
そして私も、日本国憲法という一国の憲法典だけではない、
「憲法」という法規の大切さについて、
自分自身の中に刻み込んでいきたいと考えています。
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