のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

スケールマシン(スケール号の冒険)

2019-09-02 | 5次元宇宙に生きる(一人旅通信)

   一七、最後の道程

 

 スケール号は再びピンクの川の上空に戻って来た。緑の海の中に渦を巻くようにピンクの川が流れている。

 以前に見た光景そのものだった。おばあさんの心の世界では、このピンクの川は、途中で流れが止められて、紫色に変色していたが、ここは健康そのもののようだった。

  ただ見ているだけでは気づかないが、目前のピンクの川は、前に見たものよりはるかに大きいのだ。

  おばあさんの心の世界にあったピンクの川は、原子という目に見えない小さな世界にあったが、このピンクの川は、銀河よりも大きな世界なのだ。

  つまり、原子という微小な粒で作られた川と、太陽のような巨大な星の粒で作られた川の違いだ。 スケール号は、今はもう銀河の宇宙よりも大きな体になって、ピンクの川を見下ろしているのだ。

  「スケール号、ピンクの川から離れながら、体を大きくするんだ。」

  「ゴロニャーン」

  スケール号はさらに大きくなり始めた。ピンクの川は見る間に小さくなって行き、緑の海が次第にその全体を見せるようになって来た。

  スケール号が大きくなりながら遠くに引いて行くと、緑の海は球体になっていたことが分かった。

 地球を出発する時、真っすぐな地平線が、次第に丸く見え始め、最後には宇宙空間に浮かんでいる星になって行く様子をスケール号の乗組員達は何度も体験している。今度も、それと同じように、緑の海は、宇宙に浮かぶ緑の星になったのだ。

 「地球みたいでヤすね。」

 「艦長、外にもいろんな星が見えます。」

 「DNAの遺伝子だろう。」

 緑の星の外にも、オレンジ色や青色、黄色といった星が並ぶように浮かんでいるのだ。星達はマリモのように輪郭線がぼやけて、エネルギーの塊のように見える。

 「スケール号、あの星達を避けながら進め。」

 「ゴロゴロニャーン」

 スケール号はすこぶる調子がいい。色とりどりの星達は螺旋を描いて長くどこまでも続いて行く。機械的だった宇宙が、どこか生身の体の一部のような、有機的な感じが生まれ始めている。

 「なんだか生き物の中という感じがしてきただす。」

 「ここは確かに、神ひと様の体の中なのだ。」

 艦長が緊張した顔を外の光景に向けながら言った。

 スケール号が大きくなるにつれて、星の数が多くなって来ている。密集している所や、ぽっかり空間ができている所がはっきりして来た。螺旋を描いて並んでいた星達は、細長いチュウブのようになり、空間はガスのような気体から液体に変わって来た。

 「何とも不思議でヤす。」

 「なにがだい、もこりん。」ぴょんたが聞いた。

 「何もなかった空間が、どうしていつの間にか液体になってしまうんでヤすかね。」

 「そんなもの、分かるはずないじゃないか。」

 「スケール号が大きくなることで、星が目に見えないほど小さくなったためだよ。スケール号が自由に飛ぶ事ができた空間も、小さくなって、星と星の間に入り込めなくなってしまったんだ。」

 「なるほど、分かっただス。」

 ぐうすかが大きくうなずいた。見かけ倒しの技だった。

 みんなが分かったのだと博士は思ったんだろう。それ以上難しい話はしなかった。みんなはほっとした。

 「艦長、何か動いて来ます。」

  細長いミミズのような生き物が身をくねらせながら泳いで来るのが見えた。

 「艦長、ここは細胞の中だ、急いでここを通り抜けるのだ。」博士が言った。

  「分かりました。」

 艦長はスケール号に命令して、猛スピードで細胞の壁を抜けた。その時だった、突然アメーバーのようなものが飛び掛かって来てスケール号に取り付いた。

 「な、何だこれは。」艦長が叫んだ。

 アメーバーは次々とやって来て、スケール号に張り付くのだった。

 「これは抗体だ、マクロファージ―と呼ばれている、身体の防衛軍なんだよ。我々を敵だと思っているらしい。」

 「テキ、テキ、やっつけるのだ、やっつけるのだ。」

 「こちらスケール号、我々は敵ではない。攻撃をやめてくれ。」

 「テキ、テキ、やっつけるのだ、やっつけるのだ。」

 「話が通じないでヤす、艦長。」

 「テキ、テキ、やっつけるのだ、やっつけるのだ。」

 「艦長、かまわずスケール号を大きくするんだ。しかし大きくなりすぎてはだめだぞ。」博士が言った。

 「分かってます。神ひと様の身体を壊してはいけませんからね。スケール号、ちょっと大きくなってアメーバ―を脅かしてやれ。」

 「ゴロニャーン」

 スケール号がぐんと大きくなった。アメーバー達は驚いて急に小さく丸まってしまった。

 「テキ、テキ、こわい、こわい。」

 「テキ、テキ、ばけもの、ばけもの。」

 「テキ、テキ、にげろ、にげろ。」

 アメーバー達は丸まったまま、ころころ転がって行った。

 「よかっただス」

 「一時はどうなるかと思いましたよ。」ぴょんたがホッとして胸をなでおろした。

 「スケール号、このまま進むのだ。」

 「ニヤンゴー」

  スケール号は壁を通り抜けた。ところがそこは赤い川だった。スケール号は川に押され、洞窟の中を猛スピードで流されていく。

 「たいへんだス、このままだと、どこに連れて行かれるかわからないだスよ。」

  「艦長、この川は何でヤすか!」

 「もこりん、これは血液だよ!きっと。」

 ぴょんたが横から口を挿んだ。お医者さんのプライドで胸が膨らんでいる。

 「博士、そうですか?」艦長が博士に確認した。

  「間違いない。ぴょんたの言うとおり、これは血液だ、艦長、我々は血管の中に入ったんだ。」

 「そうでしょう、博士。」ぴょんたは耳を羽ばたかせて今にも飛び上がりそうだ。

 「どうします。逃げますか。」艦長が緊張した眼差しで博士を見た。

 「これはおそらく動脈のようだ、しばらくこの流れに乗ろう。」

 「分かりました。」

 どき、どき、どき、血液は一定のリズムで流れて行く。そのリズムに乗ってスケール号も血管のトンネルをくぐって行く。そのトンネルがいくつにも枝分かれして、だんだん狭くなっているようだった。

 「博士、まだ進みますか。」

 「血管は体の表面に向かっているはずだ。血管が一番細くなる先端までこのまま行こう。」

 血管は枝が次第に細かく別れるようになって、ついにその先端までやって来た。

 「スケール号、血管から抜け出すんだ。」

 「ニャゴー」

 スケール号は血管の透き間をかき分けるようにして抜けた。そして細胞の透き間を這いながら進んで行った。だんだん窮屈になって来ている。果たして外に抜けることができるのだろうか。

 「艦長、少し大きくなり過ぎている。小さくなるんだ。そして細胞の透き間を一気に通り抜けよう。外まで後わずかだ。」博士が言った。

 「分かりました。」

 一度通った道とはいえ、体内はひとつの宇宙だ。無限の奇跡が作り上げた、物の世界の最高の構造物なのだ。物の世界にこれ以上大きな組織体はない。それが生命なのだ。当然スケール号の通る道は無限に存在する。

 間違いなく外に出るためには、臨機に応じて様々な変化が要求される。博士の知識が必要だった。博士の指示に従って艦長はスケール号を操る。この旅のもっとも緊張する瞬間だった。

 スケール号は再び小さくなって、細胞をくぐり抜けられる大きさになった。そして全速力で外に向かって移動し始めた。細胞の膜をくぐり、液体の中を泳ぎ切り、抗体や細菌の攻撃を避けながら、いくつも細胞を通り抜けて行った。

 やがて細胞の水分が少なくなり、干からびた細胞の層が現れた。ひび割れた細胞の透き間を潜り、洞窟のような空間を飛び、大きな地底湖の中にたどり着いた。

 「艦長、こんなところに大きな地底湖でヤすよ。」

 もこりんがびっくりしていった。モグラのもこりんにとって、地底湖は珍しくない。よく知っている場所だけに、なぜこんなとこりにやってきたのか、頭がパニックになってしまったのだ。

 「外はすぐそこだということだよ、もこりん。」博士が代わりに答えた。

 「だけど、地底湖は、地下の深いところにあるでヤすよ。それにこの水は、海のようでヤす。博士。見てほしいでヤす。塩水でヤすよ、これは。」

 もこりんは、スケール号の船外観測のデーターを示して言った。

 「ここをどこだと思うかね?」博士は笑いながら皆を見回しながら言った。

 「汗腺です!」

 さすがぴょんたは鋭い。お医者さんの知識が豊富なのだ。

 「その通り。この湖の上には外に開く扉がついているのだ。行くぞ艦長。一気に水面に浮かびあがれ。」

 「了解」

 スケール号は忙しくねこかきをして浮上していく。そしてついに水面に浮かび上がったのだ。しかし頭上の扉は閉ざされていた。

 「あの扉の外が神ひと様の棲む世界なのですね。」

 「そうだ、ついに来たんだよ、艦長、そしてもこりん、ぐうすか、ぴょんた。そして、スケール号、みんなよくやった。」

 博士はもう成功したような口ぶりだ。

 「しかし博士、閉じられた扉をどうします。スケール号なら無理やり出ることも出来ますが。」

 「少し待ってご覧。扉は自然に開く。その時一気に跳びだすのだ。」

 「わかりました。」

 「全員配置に着け。これより神ひと様の世界に跳びだすぞ。合図は、頭上の扉、開くと同時だ。」

 いまや艦長の命令には一抹の迷いもない。

 「アイアイサー!」

 乗組員の声もまるで勝鬨の合唱となった。そしてついに、スケール号は大きな空間の中に飛び出したのだ。

 「博士、ついに外に出ました。」

 「よくやった艦長。」博士は嬉しそうに言った。

 「やっただス。」

 「よかったでヤす。」

 「息がつけて、ほっとしました。やりましたね艦長。」

  スケール号はどこまでも広い空間の中で伸び伸びと飛行を続けた。眼下に広大な荒野が広がっている。神ひと様の身体の表面、皮膚に違いなかった。

  「スケール号、大きくなるんだ。」

  「ゴロニャーン」

  スケール号は飛びながら徐々に体を拡大し始めた。ここから神ひと様の大きさになれば、ついに神ひと様と対面することが出来るのだ。

 博士も艦長も、ぴょんたも、もこりんも、ぐうすかも、スケール号の乗組員は全員一様に緊張していた。

 神ひと様はどんな姿をしているのだろうか。

 スケール号が大きくなって行くと、荒れ果てた大地のように、延々と広がっていた神ひと様の表皮が見る見る縮んでいった。

 地上から宇宙に飛び立つ時に経験する地上の変化と同じように、スケール号の乗組員達は、やがて神ひと様の全体像を目にするはずだった。

 

 つづく

 

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宇宙の小径 2019.9.2

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心の探求

 

 

面白いことがある

 

人生は苦であるという

その苦を見つめ

その原因となるものを追い続けていくと

いつも

三歳の心にたどり着くということだ

 

 

三歳はいい加減だが

心をはじめて感じた子供の頃という意味だ

これは面白いし

興味深い

 

三つ子の魂百までという

ことわざそのものだ

 

考えてみれば

これもボタン穴とボタンの関係に似ている

三歳の心がかけたボタンが

穴とボタンの関係を決定付ける

苦悩はそこから生まれているということだ

 

人の性格は変えられない

けれども

もし人がそこまで己の心を遡って

最初のボタンに気付いたら

もう一度

そのボタンを外し

新しいボタン穴に

かけ替えることが出来るかも知れない

 

 

 

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