明日のカープ

広島東洋カープの昨日・今日・明日を見つめます

第20回『歓楽街で遊んでいても素振りは欠かさない』

2013-05-22 10:21:46 | 赤い疾風伝説


自分で言うのもなんだけど、2年連続で日本一になって盗塁王も2年連続で獲得した1979、80年ごろの俺は本当に生意気だった。言うこともやることも好き勝手だったし、年俸も副業で稼ぐ小遣いも増える一方。そりゃあ、勘違いもするよ。

ただ、一つだけ自分に言い聞かせていたことがあった。「高い給料をもらって、女の子にモテたりして好き放題にできるのは、野球で結果を残しているからだぞ」って。ワガママに振る舞えるのも野球があればこそ。その意識だけは、どれだけチヤホヤされても失うことはなかった。むしろ「これで成績が落ちるようなら、必ずシッペ返しを食らう」という恐怖心のようなものさえあった。

だから、飲みに行こうがカノジョの家に泊まりに行こうが、練習はかかさない。それこそカノジョの家にもバットを置いといて、いつでも素振りできるようにしていた。広島の歓楽街、流川なんかで飲む時だってそう。自分から知り合いを食事に誘っといて「ちょっとばかりバットを振ってきま~す」って、2時間ほど席を外したりしてね。

別に格好をつけているわけじゃなくて、習慣みたいなもんなんだ。やらないと気持ち悪いっていうか。チームメートだった達川光男さんには「ワシにはそれだけの練習はできん。イヤミか」とも言われたけど、それが俺のスタイルだったんだ。実を言うと一度だけ「しんどいから、今日は寝ちゃおう」って練習をサボった日があった。でもダメだった。夜中にうなされたんだ。起きてバットを振った後は、熟睡できた。

全ては野球のため…というスタンスだったから、体調面にも細心の注意を払ってた。調子が悪い時なんかは流川とかでファンから「なんやヨシヒコ、試合でヒット打てなくても飲みよるんか」なんてヤジられたりもしたけど、実際には飲んでいなかった。「一滴も」とは言わない。でも、ほとんどオーダーしていたのは「野菜ジュース」。キレイな女性がいたり、酒を飲む゛場の雰囲気゛が好きなだけで、酒を飲むことが好きだったわけじゃないから。

食事にも気を使っていた。体重が増えてちょっとでも動きが悪くなったら命取りだから。何も大げさなことを言ってるんじゃなくて、実際にそうなんだ。いくら足が速いからといって、簡単に盗塁ができるわけじゃない。相手だってけん制球やクイック投法なんかを駆使して、なんとか阻止しようとする。アウトとセーフを分けるのは、10分の1秒とか100分の1秒の差。スパイクを徹底的に改良してもらったりしていたのもそのためで、野球に関する努力は怠らなかった。

好きなことを言って、やりたいことをやりるためにも、本業では手を抜かない。アマチュアなら努力などの過程も評価してもらえるんだろうけど、プロはあくまで結果。俺はそれでいいと思う



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