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第25回『超極秘交際の人気女優宅。マネジャーが突然現れて…』

2013-05-29 10:12:19 | 赤い疾風伝説


相手に迷惑がかかるので、名前は伏せさせてもらいます。ある女優さんと交際していた時の話です。ご存じの方は「あの人のことだな」とニヤニヤしてください。

1979年の日本シリーズでMVPになった俺は、賞金100万円と副賞としてマツダのルーチェというクルマを贈られた。オフに慌てて運転免許を取得して、しばらくは真っ赤なルーチェに乗っていたんだけど、ちょっと自分の理想とは違っててね。翌80年のシーズン中には、真っ赤なポルシェ911SCに乗り換えた。

広島市民球場での試合後に、交際中だった女優と会うために真っ赤なポルシェをぶっ飛ばして東京まで行った…。いまだに人から「そんな噂を耳にしたことがあるんですけど、本当ですか?」と尋ねられる。ウソに決まってるだろっつーの。真っ赤なポルシェを駆って、東京に住むカノジョに会いに行ったのは本当だ。それは認める。だけど「シーズン中」というのは真っ赤なウソだ。

東京ー広島間は、おおよそ900キロ。仮に法定速度の倍以上のスピードで走ったとしても、5時間近くはかかる。朝までにたどり着くのは可能でも、そのまま翌日のナイターに出場するのは不可能だ。冷静に考えれば分かりそうなもんだけど、噂っていうのは怖いね。

ハデな世界の人と付き合っていたせいか、世間様からは「夜も盗塁王」なんてやゆされたこともあった。自分では、いつでもマジメな恋愛をしていたと思っているんだけど…。ただ、貪欲な面はあったかもね。

あるCMで一躍人気になった別の女優さんとの交際がそうだった。もう、好きで好きでたまらなくてね。カノジョとは何の接点もなかったんだけど、ツテをたどってたどって何とか自宅の電話番号をゲットして、電話攻勢で口説き落としたんだ。その時も、かなり10円玉を使ったと思う。公衆電話からの連絡がメーンだったから。

その女性との交際は超極秘でね。カノジョのマネジャーさんにもナイショだった。だから、予期せぬタイミングでマネジャーさんが来た時には焦った。カノジョに「いいから黙って隠れて」って言われて、言われるがままに声を押し殺してクローゼットに潜んでいたこともあったっけ。

まあ、いろいろあったし、遊んでいたことは事実だ。でも、遊びほうけることはなかった。自分の人気は「プロ野球選手だから」という自覚があったから。この軸がブレてしまったら、ただの遊び人になってしまう。職業意識とでもいうのか、その辺が分からずに恵まれた才能を持ちながら消えていってしまった選手は掃いて捨てるほどいる。

志半ばで引退に追い込まれた選手が、決まって口にするセリフが「若い時にもう少しやっておけば良かった」。もちろん俺だって「ああしておけば…」という思いがないわけじゃない。でも後悔はないし、実際にやれるだけのことはやった。そう思えるだけでも、プロ野球選手として幸せな人生だったと言えるんじゃないかな。

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