多良間島のきれいな海岸です。 青い空と海。 画面の真ん中にはぽっこりと大きな石があります。 青い自然の中を1人満喫している私を象徴している写真か?
とんでもありません。 これは1771年に起きた八重山大地震により発生した”明和の大津波”によって海から陸側に運ばれた”津波石”です。 海岸部には高さ2m・幅4mに近い岩石が転がっています。 多良間島では南~南南西側から津波が押し寄せたと予想されています。 だから、津波石は南側の海岸に多く見られます。
島の中にも多くあります。 牧草の中に突然、数mの岩石が現れます。 津波石は穴のたくさん開いた琉球石灰岩ですので、保水性が比較的よいためか、樹木で覆われているのが多いです。
これは農地造成を行っている場所にある津波石。 近くのユンボと大きさを比較してください。 重機で割るにも一苦労(ブレーカー掘削が必要)で、大概そのままにします。 もっとも、神聖なる場所や拝所になっているところもありますので、手を付けない場合が多いです。
畑の中だけではありません。 集落のある北側にも。 集落地では家の大きさと比較できます。
こんなのが津波と共に転がってきたら、頑丈なビルだってひとたまりもありません。 琉球大学の加藤名誉教授の論文では「多良間島の津波石は標高17m地点まで分布するので、津波の高さは最大18mくらいが推定される」と書いています。
多良間島の最も高い場所で標高34m。 人の多い集落地の標高はせいぜい15mもあるかという高さ。 つまり、同規模の津波が発生した場合、島はほぼ水没。 家々のほとんどは流され、後には津波石だけが残ることとなります。 どれだけの人が高い場所に集まれるか?
もっとも、多良間島の津波石すべてが明和の大津波によるものとは言っていません。 ”過去数回・・・”と述べています。 つまり、過去何回もの大津波が多良間島を襲っていると解釈できます。
数mもの巨石を陸地に運ぶほどの強力なエネルギーを持つ津波。 東日本大震災の津波による災害が多くの教訓を残しましたが、津波石という過去の歴史的記録から、南西諸島でマグニチュード8.0以上の巨大地震が発生した場合、どのような被害がもたらされるのか? さらに研究とその対策について考えていくべきでしょう。