誰でもわかるナノテクノロジー

ナノテクノロジーに関する解説的著書はたくさん出版されているが、私が好むのは ”Nanotechnology for Dummies”である。この本の初版は２００５年に出版されたが、その著者の一人は大学院の学生で、サイエンスフィクションの話や本当にこんなことができるのかというような記述があって、大変楽しかった。最近第二版が出版されたが、その著者アール・ボイセンとナンシ・ボイセンは二人ともベテランで、落ち着いた内容になった。Dummiesとは馬鹿な人という意味であるだけに、その内容は分かりやすい。しかも、ナノテクノロジーの基礎知識の解説に続いて、具体的な応用の説明が詳しく、どのような製品が実際市販されているかも記述されている。

このブログでは、日々の科学技術に関するニュースに合わせて、誰にも分かるようなナノテクノロジーの解説を加える予定である。ナノテクノロジーのニュースの説明にはある程度の基礎知識が必要である。

現在は、昨日述べたような原子を一つ一つくっつけて新しい物質を作り出すという段階ではない。ナノテクノロジーの主役は、色々な方法で作り出した数十個から数百個の原子からなる粒子で、これらはナノ粒子と呼ばれる。ナノテクノロジーへの期待が大きいのは、ナノ粒子の物理的、化学的性質が全く未踏の分野で、色々な突破口が開ける可能性があるからである。

最も代表的なナノ粒子は、炭素原子から作られるグラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン(8/26参照)である。まずこれらの性質を説明しよう。