アメリカの電気学会IEEEのニュース記事「何故分子ナノテクノロジーがロシアでホットなのにアメリカでは冷めているのか」に興味をひかれた。
分子ナノテクノロジーとは、いわばナノテクノロジーの原点で、原子を積み上げてナノ粒子を構築しようとするものである(8/18)。アメリカでは、前世紀末頃までは、Drexler教授たちを中心にこの分野で先駆的な研究がなされて来た。今世紀に入ってからナノスケールの材料研究に重点が置かれるようになってきた。
ロシアでは、分子ナノテクノロジーに対する興味は依然として強く、ロシアで開かれた国際会議に出席したDrexler教授が、大歓迎を受けたとのことである。アメリカで転換が起こったのは、アメリカ政府の方針である。比較的近い将来に実用化への成果が現われそうな研究の支援に重点が置かれ、分子ナノテクノロジーの分野では、よほど目的が明確なものでない限り支援を受けることが難しくなっているようだ。ロシアではこのような変化が起こらないのは、政府の形態の違いが原因であるという。ロシアでは、政治家への資金が化石燃料などから多く流れていて、税金を払う市民にあまり気を使う必要がないからだろうと推測している。
日本では、ナノテクノロジーに関しては文部省傘下の産業技術総合研究所や各大学などが先駆的な研究を行っている。2007年には、国際ナノアーキテクトニックス研究拠点(MANA)が立ち上げられ、すでに国際誌Advanced Materialsに特集号を組むほどの成果をあげている。この研究拠点に所属する約200名の研究者の半数が外国人であるという。代表者は、元旦にNHKのナノレボリューションで紹介されていたナノスイッチの開発グループの主導者、青野氏である。青野氏は、この研究拠点の目的は、世界中から最先端の研究者を集め、良い環境のもとに、ナノテクノロジーと材料科学を結びつけた最先端研究を遂行するという。最近、ドイツ発のナノテクノロジーニュースでは、「日本政府は小さいものの研究を大きく考える」と評していた。年1回この拠点を訪問するアメリカのノーベル賞受賞者、Kronko教授(フラーレン(9/8参照)の発見者)は、この研究所の若手を称賛していた。
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