もしこれまでのナノテクノロジーに関する記事を読み続けている方がいたら、ナノテクノロジーとはどんなものかおおむね理解していただけたであろう。ナノテクノロジーには夢があるということを強調したい。この夢を実現する突破口を見いだすのが研究者であり、それを製品化し経済発展と雇用拡大に貢献するのが企業化、投資家であろう。政治家の貢献も必要であろう。メディアにも情報を広める責任がある。今後は、日々ナノテクノロジー関係のニュースなどを紹介することにしよう。その理解に必要でしかもこれまで紹介していない基礎過程の説明も付加する予定である。
テキサス大学のバウグマン教授のグループは、カーボンナノチューブを編んで、ねじりが入った人工の糸筋(糸状の筋肉)を作成するのに成功したとサイエンス誌の最新号に報じている。この筋肉は両端を引っ張ると一方向に回転し、引っ張る力を緩めると逆方向に回転する。このことを利用してナノモーター(9/17参照)を作成することが出来、これによって、がんの治療や診断、ドラッグデリバリー(9/28,10/30参照)に使えるナノロボットに一歩近づいたとしている。この研究に協力しているオーストラリアの研究グループが作成したナノロボットのアニメビデオを紹介しておこう(http://electromaterials.edu.au/news/UOW112032 の1番下)。
ビデオのいちばん初めに細菌が泳ぎ回っているのが見える。細菌には鞭毛が付いている。細菌はこの鞭毛を動かして泳ぎ回ることが出来る。しばらくすると、鞭毛を動かすモーターの部分が拡大されて見えてくる。次に未来のロボットの模型が現れる。糸筋は電解液の中に浸されていて、電解液の中に対抗電極が設置されているのが見えるであろう。電極と電気回路もロボットの中に設置されている。瞬間的に電圧を加えると、中央の糸筋が右方向に回転し、放電されて電圧がなくなると逆方向に回転する。電圧を加えることによって糸筋中に溶液中のイオンが流れ込み、それによって糸筋が縮まる。これが糸筋の回転を誘起する。1,2秒間で毎分500回転に達することが出来るとされている。象の鼻や、たこの足にはこのような糸筋が動作しているとのことである。
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