ナノテクノロジーでは扱う粒子が小さいというだけではなく、小さい粒子を組み合わせた新しい構造が生まれ、それに伴って新しい性質が生まれてくる。以前にコア・シェル構造について述べたことがある(4/12,16参照)。
ライス大学のグループは、銅-酸化銅-カーボンナノチューブで構成されるナノケーブルが予想外に大きい静電容量を持ち、大容量キャパシターとして有望であることを明らかにした。通常のケーブルは同心円筒状に金属や絶縁体を重ね、電力や信号を送るのに使われている。このナノケーブルは、銅のナノワイヤーの表面を酸化させ、それにグラファイトの薄膜を巻きつけたものである。ナノケーブルの外側の直径は130nm,長さは600nm程度であるという。
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/06/120607154146.htm
再生エネルギー活用のためには、出来るだけ小さい体積の中に出来るだけ多量の電気エネルギーを蓄える装置が必要である。蓄電池ももちろん有力候補であるが、化学反応を伴わないキャパシター(11/26参照)への期待も大きい。これまでにもナノケーブル型キャパシターがいくつか提案されている。この研究の興味深いところは、静電容量すなわち蓄積出来る電気エネルギーの量がよく知られている公式での計算値の10倍から40倍にも達するという。その理由は、厚さが薄いために生じる量子力学的効果であると考えられている。静電容量の量子力学的効果は、1980年代から知られているが、金属などの伝導帯(9/25参照)の中での電子分布が変化することに起因する。
大容量キャパシターに組み上げるにはさらなる研究が必要であろうが、新しい指針を与えるものとして興味深い。
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