ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

金属の表面に氷が張らない

2012-06-12 | 報道/ニュース

以前に、はすの葉を教訓に開発された表面に生じた水滴が直ちに流れ去るコーティング法(12/17参照)について述べた。ナノ粒子でコーティングすると、水滴がナノ粒子より大きいので水滴が表面にとどまらない。水滴が溜まらなければ、氷点下でも表面に氷が出来ないはずである。ところが、その後の研究によって、このコーティング法では高湿度の場所では表面に氷が張るのを防げないことが明らかになった。水滴がたくさん集まると水の膜を作ってしまい、それが凍ってしまうらしい。

水滴が溜まらないようにするもう一つの方法は、完全に平たんな表面を作ることである。水と表面との吸着力を水の表面張力より小さくしておけば、生じた水滴は直ちに転がり去ってしまう。固体の表面では表面欠陥すなわち原子の抜け穴などがあって完全に平たんにすることが出来ない。ハーバード大学の研究グループは新しいコーティング技術、滑りやすい液体を染み込ませたポーラス表面(SLIPS,slippery liquid-infused porous surfaces)を発明した。このコーティング材の表面は液体すなわち潤滑油で完全に平たんである。広い表面積をもつポーラス材料は、潤滑油を安定に吸着させておくためのものである。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=25554.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29#.T9aiWopax-g.google

アルミニウム材料にこのコーティングを施した実験の結果、満足出来る結果が得られているという。表面に氷が張らないことにより、安全性の増加のみではなくエネルギーコストの低下が期待出来る。航空機産業や冷凍機産業などに活用出来よう。

それにしてもナノテクノロジー技術者や科学者は次から次へと新しいアイディア出しそれを実現する。それに比べると日本の原子炉関連技術者や科学者は全く保守的である。そもそも福島の事故は彼らの先輩がアメリカで内陸用に開発された原子力発電所をほぼそのままの形で海岸に設置したことに端を発している。にもかかわらずその事故を教訓とせず、応急措置を施した現存のすべての原子炉の再稼働に協力している。この原子力発電所のこの部分を補強すれば福島と同様の放射性物質のまき散らしが起こる確率が限りなくゼロに近いという原子力発電所が日本に存在しないのであろうか。そういう発電所から逐次再稼働を始めるようにしてほしい。日本の原子力産業の将来が全く心配だ(5/15参照)。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
鋼の手応え (シェールガス革命)
2013-02-01 19:32:33
 円安来りて笛を吹く。
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ナノの力 (フリクション)
2013-06-28 18:17:24
それにしても日立金属の高性能冷間工具鋼SLD-MAGICのトライボロジー特性は凄いですね。数ヶ月前の、日刊工業新聞社の「プレス技術」で読みましたが、微量の油を塗ったセミドライ状態で、摩擦させると先端技術のDLCのような自己潤滑性(摩擦係数が下がる)が出るなんて。耐摩耗性もたかいのでコーティング費用分コストパフォーマンスがよく、耐荷重能も相当応力で2500MPaと高強度でベアリング・金型などのいろんな機械の転動・摩擦・摺動部品などの機械要素に使えそうだ。まさにノーベル賞級の発明だ。
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金型分野の成長エンジン (塑性加工業)
2013-07-20 20:17:41
それにしてもそのの高性能工具鋼SLD-MAGIC(S-MAGIC)の評判高いですね。少し前にその自己潤滑性とかいう話を日本トライボロジー学会で聞いたが、モリブデンとかカーボン、それにDLCコーティングなどの怪しげな論説とも整合し、油中添加剤の極圧効果にも拡張できる話は面白かった。そのメカニズムをひらたくいえば世界初かつ世界最小の本格的ナノマシンであるボールベアリング状の分子性結晶(グラファイト層間化合物)が金属表面に自己組織化されて、フリクションが良くなるということらしい。
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通りすがりの現状報告 (特殊鋼関係)
2018-07-28 23:19:46
 いま機械摺動部品に展開されていて、自動車業界dも話題になっています。樹脂コーティングとの相性が抜群だからと言われています。
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