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ニッポニアニッポン語教師日誌2010年年頭

2011-02-01 05:41:00 | 日記
2010/01/07
ぽかぽか春庭十人十色日記01>新年寅年(7)留学生新年会

 2008年正月のこと。2007年に中国で担任した博士課程国費留学生のクラス「博士2班」の日本での新年クラス会を姑の家で行いました。古家を改築したばかりの姑が家を見てもらいたがっているのに便乗して「庶民の家を見る会」として留学生を招待したところ、姑にも留学生にも喜んでもらえたので、2009年に半年間赴任したときの担任クラスの新年会も姑の家で行うことにしました。

 姑には「材料を買って持っていき、料理は留学生が自分で行うので、何も準備しなくていいですから、台所を貸してください」と頼んでおきました。それでも姑は張り切って家の掃除をしたり椅子を3階から1階のリビングへ降ろして留学生が9人来訪するというのに備えてくれました。

 2007年の博士2班のときは、留学先が北海道大学東北大学など地方にばらけていたので、東京に寮のある5人+中国人担任のリグン先生の6人での来訪でしたが、2009年の担任クラス博士3班は、18人のうち半数が東京に集中したので、東京に寮やアパートがある学生のほとんどが来られることになりました。研究室の行事があって来られない学生からは「残念」というメールが来ました。

 「留学生さんのお口に合うかどうか、甘酒を作ってみたの。味見してね。あと、ちょっとしたおせち風の食べ物と食後にどうかと思って寒天ゼリーを作って見たのだけれど」と、姑の準備万端。
 寿司やすき焼き、天ぷらなど和風の料理を並べるという案もかんがえたのだけれど、寿司やすき焼きなどの和食も、今ではどこでも食べることができるので、今回はむしろ「なつかしい故郷の味」を自分たちでワイワイと作るのを楽しもうというコンセプト。
 私は、前もって煮込んでおけばよいおでんを作ることにして、待っていました。

 2007年と2009年の受け持ち留学生の質に違いがあります。2007年の学生は、クラスのほとんどが大学の若手教師たちで、数人を除いて結婚しており共働きなので、「妻より料理が上手です」というような学生が多かった。幼いころから働く母親の手伝いをよくしてきた層です。このときの独身の一人は1980年生まれで、一人っ子政策の最初の年の生まれでした。

 ところが、2009年の赴日本国留学生は、中国政府の方針で大学修士課程在学中の学生のなかから優秀者を選抜する方式に変わりました。修士在学中の学生、年上の1980年ころの生まれの学生では兄や姉がいるのですが、1983年、1984年生まれの学生になると、ほとんどが一人っ子です。幼いときから、両親と父方の祖父母、母方の祖父母の6人が手塩にかけて大事に育ててきた一人っ子が多く、「一度も料理をしたことがありません」という学生も多かった。

 そんな小皇帝、小公主の彼らも、留学後は「日本のレストランは高いから、中国料理を作って食べています」というメールが入って来ていて、日本に来て初めて料理をしたという学生も、「上手になりました」というので、料理はお任せすることになりました。

 駅の改札で待ち合わせるというメールのやりとりをして、午後1時に駅前へ。

<つづく>
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2010年01月08日


ぽかぽか春庭「自慢料理を作って食べよう会」
2010/01/08
ぽかぽか春庭十人十色日記01>新年寅年(8)自慢料理を作って食べよう会

 留学生寮と大学研究室の往復と、街のスーパーでの買い物はしてきたけれど、日本人の家の中に入るのは初めて、という学生がほとんどなので、まず、玄関で靴をそろえて脱ぐというところから「日本的生活」のレクチャーを始めました。

 姑の家のリビングで甘酒で乾杯。姑が用意した数の子、昆布巻き、黒豆、柿なます、栗きんとんなどのおせち料理の説明から「日本的正月」の解説。数の子は魚の卵のように子孫が増えていくように。昆布は「よろこぶ」豆は「マメに働く」など、年の初めには縁起のよい言葉を並べて、祝うのだと話しました。お節をつまみながら、日本語での自己紹介のあと、さっそく料理に取りかかる組と、食材買い出しの組みに別れました。

 姑宅から徒歩5分のスーパーで、学生といっしょに魚や海老など食材を買いました。道々、日本での生活や研究のことなど聞きました。
 「先生の日本語はよく聞き取れるのだけれど、研究室の先輩の話は半分もわからない」と、これは留学当初に日本語学習者皆が感じること。日本語教室で教師は学生が未習の文型は使わないようにするし、学生が知らない単語は使わず語彙コントロールをしながら、役者以上に滑舌良くはっきりした発音で話します。でも、研究室では若者言葉も飛び交うし、専門用語も知らない単語が遠慮無しに使われます。

 日本語を1年習って来日したというのに、研究室仲間の日本語がほとんどわからない、という状態に不安になる学生もいます。「心配ないよ。わからない部分があっても積極的に話していれば、1年後には必ず聞き取れるようになるから、どんどん話したほうがいいよ、わからないからといって会話しないでいると、どんどん下手になっちゃうよ」と、アドバイス。

 台所が狭いので、おしゃべりしつつ交代で料理を作りました。カショさんは「炸[虫下]仁」という海老の炒め物。ルールーは「可楽鶏[支羽]」という、鶏手羽のコーラ煮、ソウさんは「油炸花生米」これは油で揚げた落花生。シンラン&ケツさんはいつものようにふたりペアで「豆腐干炸肉」厚揚げと肉の炒め物。コウキさんは「清蒸海魚」鯖の酢菜蒸。博士3班クラスで唯一の既婚者だったソさんは、手慣れたようすで四川料理の水煮肉片(豚肉ともやしの唐辛子煮)と「手撕餅」という小麦粉を練って青葱を加えて延ばす中華餅をそれぞれ作ってくれました。レイショウさんは、下ごしらえなどのお手伝い。

 できあがった料理は「日本に来てから料理を始めました」とは思えないおいしい本格的中華料理で、さすが料理大国の国で親が料理しているのを見て育ったのだろうなあと感心する味でした。それぞれレシピの紹介し合いましたが、私のおでんの紹介ときたら「おでんの材料をそろえて、市販のおでんの素を入れて煮込みます。おわり」というしろもの。それでも皆「おでんはおいしいです」と言ってくれました。おでんの一番人気は大根でした。

 おなかがいっぱいになったあと、新年会のメインイベントである「お宅拝見」です。

<つづく>
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2010年01月09日


ぽかぽか春庭「日本人の家を見よう会」
2010/01/09
ぽかぽか春庭十人十色日記01>新年寅年(10)日本人の家を見よう会

 今回の留学生新年会は、日本人の家に行ったとしてもなかなか見せてはもらえない、押入の奥までのぞきましょう、というのがコンセプトです。特に経済学専攻の3人の学生には、「日本人の一般的生活は、どのような布団で寝てどのような食器を使って、どのように暮らしているのか、全部知っておくのは大切ですよ」と話しました。マクロ経済や「農村経済構築」を専門とする学生にとっても、「一般庶民の生活」を具体的に知っているのと抽象的理論だけ知っているのでは、研究の質も変わってくるでしょう。

 お風呂場や階段下収納などもすべて公開。東京の狭い敷地にひょろっと3階建てになっているので、階段下は物入れに有効利用されています。このイベントは、姑が整理整頓掃除大好き主婦だからできること。

 3階の畳の間では、「日本式の正座とおじぎ」の練習をしました。もし、指導教官のお宅などにうかがう機会があって日本間に案内されて、「どうぞお楽に」とか「足を崩してください」と言われたら、男性はあぐらをかいて座る、女性は横座りになる、というのも実演しました。今のところの日本作法では、和室で女性があぐらで座ってはいけない、ということも教えておく。留学生が茶室に招かれて立て膝で座ったという例もあるので、「韓国では女性がこのように膝をたてて座るのが作法ですが、郷に入っては郷に従えです。日本では若い人だけの集まりならいいですが、年寄りがいる場では女性のあぐらや立て膝はだめです」など伝えておきました。
 
 デザートは、娘が作ってくれたアップルパイを持参したのを切り分けて、姑が作った胡桃牛乳寒天といっしょに出しました。
 学生たちはほんとうに楽しんでくれたし、姑も学生達の気持ちが伝わってうれしそうでした。
 
 それぞれのお礼メールを送ってくれました。そのうちの2通です。(誤用もありますが、意味はよくわかると思います)

 「今日は先生の家族にご招待をしてくれて、本当にありがとうございました。今回は初めて日本人の家に行って、日本人の生活を見学できました。私とケツさんにとって、珍しいチャンスでした。おばあちゃんの料理と先生のおでんと娘さんのお菓子がすべて美味しかったんです。機会があれば、ぜひ教えてください。なお、先生のお陰で、私たちの9人が集めて、皆さんの研究生活を聞いたり、いろいろ話を話たりしていた、楽しかったです。おばあちゃんにご感謝を伝えてください。」

 「今日先生とゆき子さん(姑のこと)からご馳走を招待していただいてどうもありがとうございました!本当に楽しかったです!3月に皆さんの入学試験が終わったら、も一度先生と会いたいです。よければ、私たちの会館で餃子を作りましょう、いかがですか?」

 学生のひとりが日本語ブログに掲載した「先生の家で食べた料理」の写真と日記。
http://blogs.yahoo.co.jp/iamahappysong/11134918.html

 私のほうこそ、おいしい中華料理をありがとう。またいっしょに楽しくすごしましょうね。
 次回は、大学院入試後にぜひ会いましょう。餃子パーティもいいしお花見ピクニックというのもいいね。また会う日を楽しみにしていますよ。

 学生達は正月休みが明けると、研究室で猛烈社員のような夜遅くまでの実験に追われたり、2月に迫った大学院博士課程の入試の準備があり、忙しくなります。それぞれたいへんでしょうが、希望に輝く笑顔で日本での留学生活を送っていくことでしょう。

<おわり> 

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