趣味を登山に絞ってから2年近くになります。
登山を始める前は写真を撮る為に沢や山にわけ入っていましたが、本格的に山を登り始めたきっかけ
は3年ほど前の苦い登山経験からでした。
その頃といえば、観光名所の滝や湿原に行ってもマンネリ化した被写体ばかり。
観光ルートからちょっと外れても、普段行けるようなフィールドの写真は飽きが来ていて、
もっと深く自然に分け入り始めていました。
そんなある日、山岳風景写真にあるような山の写真が撮りたくなり、初めて撮影機材を担いで
白根山に単独で登ります。
ロープウェイで天空の足湯まで上がり、白根山頂を目指す初心者向けの楽ちんルートのはずでしたが、
これが普段ろくに運動をして来なかった自分にとって想像を遥かに超えた辛さでして…
装備も知識が不足していて、9月に冬用のジャケットと厚手のコットンパンツ、靴はフィールド撮影で
使っていた登山靴モドキ。
カメラ機材用のザックに一眼レフ2台、望遠、標準、広角、マクロレンズを詰め込み、
2キロもある三脚をくくりつけて撮影機材だけはいっちょまえ。
弁当や水、スポーツドリンク、いざという時の缶詰め、ライトなんかも含めて総重量は18キロくらいあって、
未経験者が日帰り登山で担ぐような重量ではありません。
そのくせ重要な救急用品、ツエルト、雨具などは持たない、本当に初心者丸出しの登山でした。
筋力も持久力も底辺まで落ち込んでいた上に人一倍重い装備で、ジャケットも通気性の無い防寒着。
おまけに高校生以来の2500m級登山と来ればそりゃキツいわけです。
そんな有様ですから、登り始めてすぐに息切れ。10分登っては立ち止まって休み。
レイヤリングの基本さえ知らない自分は、汗だくになって、暑くても冬用ジャケットで我慢して登りました。
道中では山ガールからオバ様、70前後の爺様にまで、山に慣れた登山者に
バンバン抜かれて一人で敗北感を噛み締めたものです。
ちなみにそれまでの自分の生活習慣はというと…
デスクワークでほとんど運動もせずタバコも吸い放題、酒も大好きで週に2回は行きつけの
居酒屋で飲みまくり。
そんな不摂生を就職してから独立した今まで20年以上は続けたのですから、筋力は無いしいわゆる
中年太りのだらしない体型。
当然、血中コレステロールと体脂肪は常に危険水準な訳で、健康診断の結果は長生き出来ないと
確信させるに十分なデータでした。
そんな有様で初めての白根山は満身創痍の登山でしたが、撮影してきた数枚の風景は下界では
見る事のできない異世界の素晴らしさを秘めており、平凡な写真であっても自分を魅了しました。
それでも、山岳写真家が撮影する作品には足元にも及びませんでしたが…
どうすればあんな素晴らしい写真が撮れるのか…最初の登山撮影で悟りました。
太陽の角度、雲の出方、時間で違う光の強弱、色。
どんなに良い機材を担いでも、その時、その場所に居なくては自分が思い描くような山岳写真は
撮れないのです。
自然条件は毎日変わり、同じ山に何度も登り詰めて初めて撮れる写真ということです。
たった1日、一眼レフと複数のレンズ、重い三脚を担いで上がったところで、自分の写真はやっつけで
撮影した記録写真に過ぎませんでした。
それからというもの、トレーニングジムに通い独学で登山の知識を吸収しました。
大切なのは、登山向けの身体を作る事と、もっと山を知る事です。
時間さえあれば毎週のように山に通い、トレーニングを続けているうちに筋肉が
付いて体脂肪が落ちて来ます。
筋肉が付くと、筋肉を維持する為にエネルギーが使われ、基礎代謝が上がって
食べても太りにくい体質に変わっていきます。
身体が出来てくると前回キツかった山が楽になり、ルート距離も伸びてコースタイム
も上がって行きました。
キツかったジムトレーニングもコツをつかむと楽しくなります。
最初は5分も走ると息が上がっていたのが10分、15分と走れるようになり、
やがて30分で5kmを走れるようになります。
有酸素運動も筋力トレーニングも、自分がキツいと感じる負荷を一定時間キープ
しないと効果が上がりません。
筋力トレーニングではある程度、筋肉痛が残るくらいまで追い込むのがコツです。
筋肉痛は筋肉の繊維が傷んだ証拠で、これが修復する時に筋肉は強く大きくなります。
高負荷な筋トレを行ったら、2~3日休ませて修復させるサイクルが効率良い
とされています。
トレーニング→身体能力の向上を実感→楽になり運動が楽しくなる→更に負荷を上げる
このサイクルにハマると運動せずにいられなくなります。
トレーニングと登山の2年が過ぎ、今では同じ山を登るにしてもアップダウンの激しい
コースや20キロ以上の縦走といった、あえて厳しいルートを選ぶようになりました。
退屈な樹林帯ではコースタイムを縮める為にペースを上げたり、景色の開ける尾根では
ゆっくり楽しみながら歩くといった余裕も出てきました。
登山者としてのスキル、体力は50才くらいまで向上させる事ができる…
そんな話を聞いた事がありますが、間違いではないと実感しています。
50才まであと3年。
50までに登頂しておきたい憧れの山が北アルプスに1座、北海道に1座あります。
そして50を過ぎたらガツガツ登らずに、じっくり時間を掛けて山岳写真を撮りたい…
焦らず多くの山に登り、経験、技術、体力を積み上げていきたいですね。
この年になると、職種に限らず長年やってきた仕事は出来て当たり前になります。
ほとんどの仕事は経験した事の応用になり、新鮮さが薄れるのは仕方ありません。
そんな中で、趣味の世界は新しい発見に満ちていて大きな伸び代があります。
新しく知る事、自分の能力を向上させる事は何才になっても楽しいものです。
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