今年夏の中央省庁の幹部人事が出そろった。経済再生など政府の課題は山積しており、それを支える各省庁の役割は重大。霞が関の次代を担うキーパーソンに話を聞いていく。初回は特許庁長官の小宮義則氏。約12年前、経済産業省の知的財産政策室長として不正競争防止法の改正に力を注ぎ、米国の「経済スパイ法」に近い形で営業秘密の不正取得や使用、開示に対する刑事罰導入が決まった。中国の模倣品対策にも尽力するなど「知財室長の仕事を機に人生が変わった」。
特許庁長官という大役を拝命し、知財業界に舞い戻ったが「日本の産業が方向性を見失っていることに起因しているのか、関係者の方向性がばらついている」と感じる面も。「グローバル化」、「人工知能(AI)・ビッグデータなどの新技術」、「中国」という三つのキーワードを軸に政策の方向性を練る。知財権は国家主権に制約されるが、貿易財は世界を行き来する。
米国や欧州、中国など各国・機関の「特許長官とのパイプを太くする」ことで、企業のグローバル事業を側面支援する。中でも「中国の存在感が急激に大きくなっている。知財政策を勉強し、じっくり話し合う」考えだ。また、英国の欧州連合(EU)離脱問題も「単一特許制度、統一特許裁判所(UPC)制度の創設が遅れる可能性が出てきた」と注視する必要がある。
AIやIoT(モノのインターネット)の知財制度では「産業技術環境局の標準化や経済産業政策局の知財室などと連携し、総掛かりで対応する」構え。趣味はテニス。経産省テニスサークルの副会長を務める。座右の銘は「至誠、天に通ず」。さて、新長官これからの知財どうする?