昔むかし、神話の世界のころシューシュポスという男がいました。
彼は人間の中で、もっとも聡明でたくましい男だったんですが、その行動は神々の怒りを買うことばかりでした。
神々は何度も許されるチャンスを彼に与えたのですが、シューシュポスはそのたびに、神たちを裏切り、とうとう地獄に落とされ、罰を受けます。
シューシュポスが課せられた罰は、大きな岩を山の頂まで運んでいくことでした。
ですが、その大きな岩は、山の頂の近くに来ると、岩自体の重みでふもとまで転がり落ちてしまいます。
毎日毎日精一杯の力で、岩を押し上げ山を登っていくシューシュポス。
しかし、やはりいつも山の頂近くに来ると、岩はその重み自体に耐えられなくなって、ふもとまで転がり落ちていく・・・・・・ 転がり落ちていく岩を見つめながら、シューシュポスはまたふもとに向かって、山を降りていきます。
そんなことを繰り返しているうち、山を降りている時にシューシュポスの心に「悦び」の感情がわきあがります。
この強烈にして、自分ではどうしようもない責め苦、そして何時果てるともわからないその真っ只中で、彼はまた明日、岩を持ち上げることに悦びを見出すのです。