テレビタックルを少し見ていたら、焼酎飲み放題の居酒屋やビール一杯たのむと餃子がついてくる店や、カレーが無料で食べ放題のラーメン屋などが紹介されていた。そんなことしてやっていけるのかと思うが、意外なことにそれで売り上げがよくなって、無料の分を計算に入れても十分儲けられるとのことだった。
でもよく考えると、無料で与えることはなかなかの方法である。
というのも人間にとっては、交換や売買ではなく、贈与が原則的な形態であるからである。モースの贈与論にそのことが詳しく書いてある。
プレゼントはコミュニケーションの一つである。何かもらうとうれしい。しかし、物をもらうことで何らかの精神的負い目を負ってしまう。相手にはそのつもりがない場合もあるし、精神的負い目を負わせるために贈与している場合もある。
また、贈与行為は、何のかかわりもない人と何らかの関係性をつくるには最高の方法であるといえる。街で「これ買ってください」といっても普通は誰も相手にしない。しかし、何かただであげるといわれれば、受け取ってもらえる確率は高くなる。ティッシュなんかだと受け取ってもらえないこともあるが、それでもティッシュを買ってくださいというよりよっぽどましだ。
一度、その人の無意識に何らかの関係性をつくってしまえば、まったく関係のないところよりも一歩リードすることになる。人間は贈与した人に悪い感情を持てないからである。その意味で、贈与はコミュニケーションの最高の形態ともいえる。言葉なんてまったく通じなくてもよい。
儲けようとしてけちけちに行動すると、人は逃げていく。「欲しいものは、与えなくては手に入らない」ということなのだと思う。儲けとは真逆の贈与行為を行うことで、大きく儲けることができるとは、世の中は本当に面白いなぁと思う。