思考の踏み込み

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形影神20

2014-09-29 00:18:27 | 
"直観" が続けた。

「ともかく ー 君の言う人体の研究とは所詮は死体の解剖のことだろう?死体は生体とは別のモノであることに、何故君ほど頭の良いモノが気が付かないのか?
"肚" は確かに生体には実在しているよ。」

「…しかし、それをどうやって証明するのです。」


「僕が知ってるよ!」




「?」


ずっと黙って酒を飲んでいた淵明の膝もとから、小さな声が響いた。

「おお、目が覚めたのか。少年。」


淵明が嬉しそうに言う。


「うん。こんなに大きな声で言い合いしてればね。兄さん、半年ぶりだね。」

「少し、大人っぽくなったな。元気そうで安心したぞ。」

久々の兄との再開に顔をほころばせながら、"感覚" は "知性" に対して向き直り、言った。

「僕は知ってます。"肚" の伯父さんは確かに居るよ。」




「いや…。」

何か知性は言おうとしたが、"影" が遮った。

「もうよい、"知性" よ。その子が "在る" というならばまず間違いはない。
その子は歪んではいない。我々が信用するに足る者だ。
さぞ "形" が良い育て方をしたのだろうて。
この世界において、確かなものはその子の言うこと、感じていること、それだけだ。
その子が正しく育ち、立派に成長する事はこの世界全体の願いなのだ。
我らはずっとその子を待っていた…。」

「待っていた?」

"意識" が問う。

「そうだ。いや、それどころかー 」




「その子の為に "この世界" は創られた!そういっても過言ではない…。」

ー そう、言いながら "影" は内心首をかしげていた。そんなセリフが出ようとは思ってもいなかったからだ。
それはー 、おそらく彼の真の姿たる "闇" が発した言葉ではないか、そう彼は瞬時に感じていた。