思考の踏み込み

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形影神4

2014-09-12 07:32:05 | 
「ではー 、形を通過しその影として存在する。

それが "心" であると、そしてその逆もあるが故に心は "実体" だと、そうおっしゃられるのか?」

「然り。」

それは…やはり我々には少し難しいな、そういって意識三兄弟は顔を見合わせあった。




"心" は、ではもう少し説明してみようか、本来君達が普段扱っている "ことば" によっては表現が困難な内容ではあるが、と前置きして言う ー 。

「実とか影とか、そういう例えが混乱のもとかも知れない。

無理からぬ事なのだ。

心と形、つまり ー身体の関係性はこの世界のどんな事象にも似ているモノがないからだ。例えようがないんだ。

まああえて言うならば "時空" 。
即ち、空間と時間の関係性が極めて酷似している。おわかりか?」

「…。」


そのとき、黙り込んでしまった三人の横で小さな影が動いた。




「わかる、なんとなくそれ、わかるよ!」

「あの子は誰だ?」

わずかに周囲がざわめく。

ー あれは "形" の末の子、我々がその成長を待ち望んでいたモノだ。
誰かがつぶやいた。

「君の名は?」
心が優しく尋ねた。

「僕は "感覚" 。今日は面白そうだからこっそりついてきちゃった。」

「そうか、君が "形" がいつも自慢していた息子か。昔見たときはまだ赤ん坊だったが、ずいぶん大きくなったなあ。
ところで君はどういうふうにわかったというのかね?」

「うん、この前ね、僕の兄さんがね星空を観ながらつぶやいてたのを思い出したんだ。あ、僕の兄さんは "直感" ていうんだけどね、すごく頭がいいんだよ。
僕はとても尊敬してるんだ。」

そうかー 、君はあの "直感" の弟か。
どうりで聡い面立ちをしている。
で、君の兄さんは何て呟いていたのだい?
心は横にいる彼の父をチラッと見てから、その聡明な少年に問うた。



すでに月は中天に達し、昼と見まごう程に明るく世界を照らし出している。
皆、その少年の ー 月明かりの良く映えるつややかな黒い瞳と、紅い唇が次に動くのを待った。

琴の調べと響きが、その一瞬の静寂を、より美しい瞬間にしてその場にいるモノ達に印象付けていた ー 。