http://realsound.jp/2018/02/post-163756.html
『ドラゴンボール』シリーズ主題歌はなぜ愛され続ける? 歴代ソングが残した功績から解説
2018.02.28
創刊50周年に際して、様々な企画が進行している『週刊少年ジャンプ』作品の数々。中でも鳥山明による原作コミックの全世界発行部数が2億4000万部を超える大ヒット作であり、日本の少年にとってのヒーロー像に大きな影響を与えたのが、テレビアニメ『ドラゴンボール』シリーズだということに異論を挟む人はそういないだろう。
2月28日、現在放送中の最新作『ドラゴンボール超』の主題歌を集めたCDアルバム『ドラゴンボール超 超主題歌集』が発売される。ここでは歴代の『ドラゴンボール』シリーズの主題歌を振り返りながら、今回初めて作品にまとめられた『ドラゴンボール超』の主題歌ならではの魅力を考えてみたい。
初期のドラゴンボールの主題歌は、何年にもわたって同じ楽曲が使用され、物語の進行に合わせてアニメーションだけが差し替えられるという形式が取られていた。その第1弾となったのが、1986年に放送を開始したシリーズの元祖となる『ドラゴンボール』のオープニング(OP)曲「魔訶不思議アドベンチャー!」とエンディング(ED)曲「ロマンティックあげるよ」だ。中でも「魔訶不思議アドベンチャー!」は言葉で物語の世界観を可視化する描写の巧さによって、この時代のアニソンを代表する楽曲になった。1989年から1996年にかけて放送された次作『ドラゴンボールZ』では、影山ヒロノブによる1話~199話のOP曲「CHA-LA HEAD-CHA-LA」が170万枚以上を売り上げるモンスターヒットを記録。ここでは同じく影山ヒロノブが歌う200話~291話のOP曲「WE GOTTA POWER」も含めて、当初は冒険アニメだった前作『ドラゴンボール』を経て、格闘/ヒーローアニメとしての歩みを本格的にはじめた『ドラゴンボールZ』の世界観が、影山ヒロノブによる熱い歌声のパワーや、森雪之丞による<CHA-LA HEAD-CHA-LA><へのへのカッパ><今日もアイヤイヤイヤイヤイ>といった語感やリズムが意識された歌詞によって巧みに表現されていた。
ちなみに、1話~199話のED曲「でてこいとびきりZENKAIパワー!」ではイントロ部分のノイズを逆再生すると制作にかかわったスタジオのスタッフや制作スタッフの名前が登場する仕掛けが用意されていたこともファンの間で話題になった。また、『Z』では200話~291話までのED曲「僕達は天使だった」も「CHA-LA HEAD-CHA-LA」に続いて影山ヒロノブが担当している。そして、こうした楽曲が長く使用されることで、初期における『ドラゴンボール』のイメージが定着した部分は大きかったはずだ。
一方、1996年にスタートした『ドラゴンボールGT』では、FIELD OF VIEWの「DAN DAN 心魅かれてく」がOP曲に。坂井泉水(ZARD)と織田哲郎という90年代のJ-POPシーンを代表するビーイング系の2人が作詞作曲でタッグを組むことで、『ドラゴンボール』シリーズの楽曲にいわゆる“アニソン歌手”以外のアーティストによるアプローチをもたらした。『ドラゴンボールGT』ではED曲でも同様の手法が取られており、DEEN、ZARD、工藤静香、WANDSといった面々が新たに『ドラゴンボール』シリーズの楽曲を担当することになった。
その後『ドラゴンボールZ』のデジタルリマスター再編集版『ドラゴンボール改』を経て、2015年からはじまった『ドラゴンボール超』(以上、フジテレビ系)は、『GT』以来となるテレビ版最新オリジナルストーリーとあって、主題歌にも『ドラゴンボールGT』の延長戦上にある新たな試みが詰まっている。
まず、OP曲で印象的なのは、どの曲にも登場する「限界をもうけない/限界を突破する」というキーワード。鳥山明がストーリー原案や主要キャラクターデザインを担当した全編は悟空やベジータが神々や宇宙の最強戦士たちを相手に戦う壮大なスケールの展開に突入し、彼ら自身もスーパーサイヤ人ゴッド、スーパーサイヤ人ブルーといった新たな力を獲得して各宇宙の存続をかけた過去最高に熾烈な戦いが続いていく。「超絶☆ダイナミック!」「限界突破×サバイバー」という『ドラゴンボール超』の2つのOP曲で大切に描かれている「限界を突破する」というキーワードは、そうした作品の世界観を楽曲にも反映させたものだろう。
そして興味深いのは、主題歌を担当するアーティスト自身も、楽曲内で自らの殻を破るかのように限界を突破し、新たな表情を見せてくれていること。まず驚いたのは、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉が担当した1話~76話までのOP曲「超絶☆ダイナミック!」だ。「あの吉井和哉がアニソンを歌う」ということ自体も大きな話題となったこの楽曲では、<身ノ程知ラズには/後悔とか限界とか/無いもん><Waku-Wakuも/超絶(スーパー)なんだぜ>と悟空をモチーフにしたと思しき決意が力強く歌われる。そのシングルのカップリングに『ドラゴンボール』のED曲「ロマンティックあげるよ」のカバーが収録されていたことも踏まえると、これはシリーズの歴史の積み重ねの上で新たな場所を目指し続ける『ドラゴンボール』シリーズ自体の決意にも取れる雰囲気で、歌詞をお馴染みの森雪之丞が担当していることがその魅力を倍増させている。また、77話~131話のOP曲となる「限界突破×サバイバー」では、同じく森雪之丞による歌詞の世界観の中で、氷川きよしがアニソンに初挑戦。氷川きよしはアニメ内「今週の見どころ紹介」コーナーで声優にも挑戦した。
一方ED曲には、THE COLLECTORSのようなバンドとともにKEYTALK、Czecho No Republicといった若手アーティストが多数起用されており、シリーズの長い歴史を経た今ならではの内容を持った楽曲が多く使用されている印象だ。たとえばグッドモーニングアメリカによる「ハローハローハロー」は、ランドセルを背負った少年を眺める描写を経て<ハロー ハローハロー/今の僕はどう見えてますか?>と子供時代の自分に語りかけるような歌詞が歌われ、子供だけでなく、『ドラゴンボール』シリーズを観て育った大人にも響くような楽曲になっている。また、アルカラによる「炒飯MUSIC」には、前述の『ドラゴンボールZ』ED曲「でてこいとびきりZENKAIパワー!」の逆再生ネタにオマージュが捧げられ、逆再生すると「すべてのドラゴンボール好きに捧ぐ」というメッセージが表われる。
同時に、『ドラゴンボール超』のED曲は過去最高にバリエーションが豊かなのも大きな特徴だろう。その筆頭はももいろクローバーZの姉妹グループの一組、ばってん少女隊の「よかよかダンス」。この曲は博多弁の歌詞の中に「“未来”トランクス編」の内容がちりばめられており、<DANdaDAN>という歌詞は、恐らく『ドラゴンボールGT』のOP曲「DAN DAN 心魅かれてく」へのオマージュだろう。また、亀田誠治が編曲を担当したLACCO TOWERの「遥」は、OP曲の雰囲気と対になるようにテレビアニメのED曲=作品放送時間との別れの楽曲という雰囲気を見事に表現していて、シリーズの全エピソード放送終了時に聴くと、また聴こえ方が変わるかもしれない。
また、本作にはボーナストラックとして串田アキラが歌う「ザ・アニソン・クラシック」と言える挿入歌「究極の聖戦」も収録。これは間違いなく、アニソンレジェンドを起用することで実現した『ドラゴンボール』『ドラゴンボールZ』シリーズ主題歌へのオマージュだ。同時発売となる後半戦の劇伴曲などを収録した『ドラゴンボール超 オリジナルサウンドトラック-Vol.2-』の楽曲もあわせて聴けば、『超』での激闘の数々が蘇ることだろう。
現在放送中の『ドラゴンボール超』は物語のクライマックスに向けて重要な局面を迎えている。また、前回放送分にあたる2月18日放送の第128話「気高い誇り最後まで!ベジータ散る!!」には今年惜しまれつつ急逝したブルマ役声優・鶴ひろみによる最後のブルマの演技が収められ、ベジータが力尽きるシーンで印象的に挿入されていたことも記憶に新しい。今後はブルマ役を久川綾が引き継ぎ、作品はいよいよ最終局面に突入するところだ。そうした作品と同様、今回の『ドラゴンボール超 超主題歌集』にも、様々な人々の思いの積み重ねの上で限界を突破していく『ドラゴンボール超』の魅力が、様々な形で表現されている。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。
■リリース情報
『ドラゴンボール超 超・主題歌集』
発売中
価格:3000円+税
<収録曲>
1.吉井和哉 「超絶☆ダイナミック!」
2.グッドモーニングアメリカ 「ハローハローハロー」
3.KEYTALK 「スターリングスター」
4.LACCO TOWER 「薄紅」
5.Czecho No Republic 「Forever Dreaming」
6.ばってん少女隊 「よかよかダンス」
7.アルカラ 「炒飯MUSIC」
8.ザ・コレクターズ 「悪の天使と正義の悪魔」
9.氷川きよし 「限界突破×サバイバー」
10.井上実優 「Boogie Back」
11.LACCO TOWER 「遥」
・BonusTrack
12.串田アキラ 「究極の聖戦(バトル)」 ※挿入歌
『ドラゴンボール超 オリジナルサウンドトラック -Vol.2- V.A.』
発売中
価格: 3500円+税
<収録内容>
DISC.1
M1.限界突破×サバイバー(TVサイズ) 歌:氷川きよし M2.超絶☆ダイナミック!(ヒーローVer.) M3.戦士の魂 M4.人類ゼロ計画 M5.トランクスとマイ M6.母の愛 M7.悟空ブラックとの死闘 M8.ミステリアスな謎解き M9.肉弾バトル M10.圧倒的ザマスのパワー M11.屈辱的敗北 M12.合体ザマス誕生 M13.悲壮バトル M14.救世主トランクス M15. 人間たちの讃歌 M16.平和の誓い M17.全王の怒り M18.勝利の凱旋 M19.超絶☆ダイナミック!(敗北Ver.) M20.超絶☆ダイナミック!(悲しみVer.) M21.不気味な敵 M22.限界突破×サバイバー(インストゥルメンタル・AType) M23.ジレンのテーマ M24.戦いの序曲 M25.第7宇宙ピンチ M26.未知なる領域 M27.限界突破 M28.目の前の壁 M29.限界突破×サバイバー(インストゥルメンタル・B Type) M30.代償 M31.少年たちの冒険 M32.遥かな旅 M33.カムフラージュ・バトル
DISC.2
M1.怪しい企み M2.必死の企て M3.華麗なる戦士たち M4.必殺の一撃 M5.大切な仲間 M6.かけひき M7.全王のテーマ M8.ゴリ押しバトル M9. 限界突破×サバイバー(のんびりVer.) M10.瞬殺バトル M11.高見を目指して M12.手強い敵 M13.希望にむかって M14.限界突破×サバイバー(変則バトルVer.) M15.限界突破×サバイバー(平和Ver.) M16.限界突破×サバイバー(予告) M17.強敵との激闘 M18.夢のタッグマッチ M19.恐るべき敵 M20.拮抗する力 M21.命をかけた秘策 M22.勝ち目のない戦い M23.最後の死闘 M24.界王神たちの企み M25.作戦会議 M26.限界突破×サバイバー(インストゥルメンタル・C Type) M27.我らがヒーロー、孫悟空 M28.遥(TVサイズ) 歌:LACCO TOWER
(C)バードスタジオ/集英社
(C)バードスタジオ/集英社・東映アニメーション