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イノベーションと競争優位 コモディティ化するデジタル機器 榊原 清則,香山 晋,延岡 健太郎,伊藤 宗彦,森田 弘一,吹野 博志,新宅 純二郎,小川 紘一,善本 哲夫,小笠原 敦 NTT出版
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前に取り上げた「成功する製品開発」は綿密な研究だが、今の目で見ると、「個々の製品を中心にしながらも、個々の製品を超えた、企業全体としての価値創造・獲得の仕組みの全体像」の視点が欲しくなる。そして、そのような研究は存在するのであって、次の研究などはその代表的なものであるようだ。
- 「イノベーションの収益化、榊原清則著、有斐閣、2005年」
- 「イノベーションと競争優位、榊原清則+香山晋 著、NTT出版、2006年」
特に後者が、前者を踏まえ、かつ各業界のケーススタディを含んでいる。(そのため本投稿のタイトルとした。)それらの中において提示されている解答は、乱暴に要約してしまうと、
ということに尽きると思う。以下引用。
「技術プラットフォーム」の構築が技術戦略においては決定的に重要である。個別的な技術・製品・事業を育成することはそれ自体として大切であるが、技術戦略の課題としてはむしろ、それらの個別的な技術や製品や事業を連続的に生み出していく、豊かな苗床としての技術プラットフォームの構築が重要である。技術戦略の最重要課題は、単発のヒット商品をつくることではない。成長のエンジンである技術プラットフォームの構築にこそ、その目的がある。(「イノベーションの収益化、榊原清則著、有斐閣、2005年」P.251)
そのような広範なSoC分野での成功に必要なことは何であろうか。多様化、高度化し、さらに変化しつづけるという課題に応えていくためには、体系的に整備された共通の基盤(プラットフォーム)を用意する以外に解はない。すなわち、複雑な設計を短期間で、しかも製造の問題を前もってクリアした形で完成させるには、デバイス・プロセス技術、製造技術を統合したシリコン技術であるテクノロジー・プラットフォームと、相互に整合性の確保された設計のプラットフォーム(デザイン・プラットフォーム)が必要である。またSoCがマイクロプロセッサを多数配置した構成に進化していくことが必至である以上、マイクロプロセッサのプラットフォームがそれらを密接に結びつける役割を担わなければならない。さらにそれらの上に、各応用分野に適した、製品開発のためのアプリケーション・プラットフォームが構築される。これらのプラットフォームが、かつての「水平分業モデル」といわれた分離独立型ではなく、有機的に統合・最適化されたものであることがIDMにとってはとりわけ重要である。(「イノベーションと競争優位、榊原清則+香山晋 著、NTT出版、2006年」P.210)
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ではプラットフォーム構築のために何が必要か?どのような組織運営が必要か?例えば技術者に求められるものはどう変わるのか?・・・これらに対する解は、本書の中にも示されていない。
それを考えるためには、たとえば、技術プラットフォーム戦略で名高いキヤノンのウェブサイトを見ながら、
- このウェブサイトの目次の全体像を誰が描いたか。
- これらのプラットフォーム技術を誰が選定・定義したか。
- プラットフォーム毎に誰が技術開発をとりまとめているか。
- プラットフォーム技術の開発者は製品の開発者と何が違うか。
・・・等々を考えてみると、次の解が見えてくるように思う。一言で言えば、まず思考のプラットフォームが必要、ということになるだろう。