人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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絶好調の任天堂が繰り出す、次世代ゲームマシンWiiの開発秘話。「電子二等国」の話に比べてこちらの話は明るい。こちらゲーム機も電子は電子なのだが。

ただし、Wiiの開発は必ずしもハードの開発ではないし、ゲームソフトの開発でもない。「人と電子のインターフェース」というか、「電子を使ったコミュニケーションデザイン」というか、マン・マシン・インターフェース領域(レイヤー)のイノベーションである。システムにはそのような豊かな内容を持つ領域(レイヤー)があることは念頭に置いておきたい。人と電子の接点のデザインこそが、今後の、映像と音響とコンピュータと通信の融合を通じた、様々なハードやソフトの統合の鍵になるかもしれないのだから。

さて、いずれにしても任天堂は、人と電子のインターフェースのイノベーションにおいて、勝ちパターンを生み出しつつあるようだ。任天堂には、継続的にイノベーティブな次世代マシンを生み出していける仕事のプロセスや組織運営方法が出来上がりつつあるのだろうか?そうであれば、それを方法論化、普遍化して他の日本企業にも移植できないだろうか。そのような問題意識を持って本記事を読む。


そして記事からわかることは、次世代ゲーム機の開発というものは、「プロセス」とか「組織」とかいう言葉がはらむ、機械的でシーケンシャルなものではなく、「経営トップ3人のアイデア交換を核とする、従業員を巻き込んでいく渦巻き」のようなものである、ということである。どうやら本当に経営トップが開発の主体者なのである。(携帯機)DSのコンセプトは山内前会長の「画面を2つ使ったらええ」という極めて具体的な言葉から始まったというし、Wiiの開発も、岩田社長の問題意識と最初のコンセプトを2人の専務が受け止めて、経営トップ3人でディスカッションすることから始めている。

そしてそのディスカッションの結果を社内に向けてアナウンスし、社員と何回もキャッチボールをしながらコンセプトを練り上げている。そして、プロジェクトが始まると、ソフト部門とハード部門の間で、「プロトタイプの品評会」「サンプルプログラムを使っての実験」を繰り返して、アイデアを出し合い、取捨選択し、煮詰めていく。そして、製品が具体化してきてもなお、岩田社長自ら、「筐体のサイズ」や「ファンの清音化」といった細かい点についても、鍵となる部分については自ら要件を出していく。

まさにこれぞ、イノベーションのプロセスではないか。(比喩的な表現をすれば)核となるアイデアに対して加えられたコメントの数、コメントした人数の数、コメント間の相互リンクの数、などを指標化することはできるだろう。そしてそれを、より「ハードウェア開発のモデル」に近いと想定される、ソニーのプレーステーション3の開発過程のそれと対比してみたら、面白い結果が得られるのではないかと推測する。

ただし、といって、これをシーケンシャルな工程として方法論化、普遍化することは難しいかもしれない。むしろ、プロジェクトの過程で加えられていく付加価値やそのための行動を、類型化して、それを、(高名なデザイン会社のIDEOが提唱するように)人の役割としてパッケージングしていき、それが例えば10タイプの役割として整理されたならば、それら役割間の相互作用として業務/協働活動を記述することがよいかもしれない。

そして、協働チームにメンバーを加えるにあたっての要件、教育方法、キャリアパスなどについても考えていかなければならないが、それも、(抽象的に表現すれば)これまでのものよりも「多面的でソフト」なものになるだろう。これも、2.0ということかもしれない。



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