スティーブ・ジョブスのインタビュー記事より、iPhoneで動画ダウンロードサービスを提供しない理由。
問: 動画再生が可能な iPhone で、動画をダウンロードするサービスを提供しないのはなぜか。
答: 携帯電話が必ずしも、楽曲の膨大なリストを探して閲覧するのに最適なツールではない。(また、)携帯電話へのダウンロードは値段が高くなる。地上波ネットより電波のコストが高いからだ。(また、)携帯電話に音楽をダウンロードしても、電話を落としたり、下取りしたりした時に数百ドル分の楽曲を失わないために、パソコンに同期化して移しておかなければならない。高いカネを払って、しかも良くない環境で携帯電話にダウンロードして、パソコンに同期化しておくか。あるいは画面が見やすいパソコンで購入して、それを携帯電話に同期化するか。現在iPodは1億台あり、所有者はパソコンに同期化する方法を知っている。
「どの技術を用いることにするか」、ということに関する、ジョブスの考え方が現れている。
- 携帯電話のデータ伝送量がいくら多くなっても、ケーブルには常に負ける。
- 携帯電話はパソコンに比べて常に消耗性が高いゆえに、大量のデータ保存場所としては、携帯電話は選ばれない。
ある技術は、他の技術と比べた相対的な優位性によって用途が決まる。携帯電話がいくら進歩しても、ケーブル及びパソコンとの比較では、いつまでたってもサブの位置づけになる。技術の進歩のロードマップを睨むことは重要であるが、特定の技術に囚われた途端出口のない世界になる。逆に、他の技術との相対的な優位関係が変化しにくい場合には、わざわざ全ての技術のロードマップを押さえておく必要はない。
そのような、全体観の発想が重要であるように思われてならない。要素技術よりも全体像、バランス、すなわちアーキテクチャの発想ということになるのだが・・・。ユビキタス、例えばバーコードの代わりにRFIDを用いた物流ソリューションの提案に対して、次のような会話が永遠に成り立ってしまうのではないかとおそれる。
問: RFIDを結局採用しないことにした理由は何故か?
答: RFIDは、バーコード印刷に比べて値段が高くなる。スキャナーでスキャンする必要がなくなるとしても、RFIDでは機密やプライバシーのリスクが高くなるため、RFIDをつけた対象物のステータス管理をするために、物の移動経路や読み取りについては従来以上に手段やプロセスをきちんと定義することが必要になる。だから、ID を管理するだけであればバーコードで十分である。