人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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今後のモノづくりの現場を支える人材は、完成品メーカーに垂直統合されていくのがいいのか(=それもできれば正社員の形で)、それともアウトソーシングの積極活用と合わせて水平分業化されていくのがいいのか。製造業だけでなく建設業の現場も、その議論の対象になるべきことは確かである。

建設業界は、職種別の水平分業、専門化が進んでいた業界である。そのことの社会的・経済的な意味の評価は様々であると推測されるが、メリットの反面では、

  • 社会集団としての固定化
  • 高学歴者が入ってきにくい状況
  • 技術の固定化とイノベーションの阻害

のようなデメリットが顕在化してきたことは確かであろう。新しい段階に進む必要がある。そこで垂直統合の方向に振り子を振り、「企画、設計から施工管理、実際の作業、アフターメンテまですべての業務を社内に抱え、職人も内部に抱え、育成も内製化する」建設会社が現れた。それが、静岡県沼津市の平成建設である。平成建設は、2005年度版の就職志望企業ランキングのゼネコン部門において、大手ゼネコンが上位に名を連ねる中、10位にランクインしたという。なるほど、充実した採用ウェブサイト( http://recruit2009.heiseikensetu.co.jp/ )もある。

正社員として内製化することによって、人件費が高いレベルで固定費化することになったわけだが、そのデメリットを補うために多能工化することによって、

  • 工事量の変動にも対応しやすくなり、
  • 打ち合わせ時間が減るなど、コミュニケーションコストが下がり、
  • 顧客(施主)に顔を向けてチームで作業を行うことで、顧客満足を高めやすくなり、

デメリットを補うことができるようになったという。ここには、新しい建設業人材育成のモデルが示されていることになる。すなわち、

  • 従来よりも統合化された職種、新しいキャリアパス
  • 従来とは異なる成果責任(分業化された作業を仕上げることもさることながら、完成物への貢献と顧客満足)
  • おそらくは、職種間の共通部分が統合化され、より合理化された育成カリキュラム

現在は平成建設独自の取組みであるが、この「平成建設モデル」が固まり、人材育成システム化された暁には、それを雛形にして業界を変えていくこともできるのではないか。そして新しい分業の仕組みが出来上がっていくかもしれない。


ところで、下記の図は、「ITスキル標準」の職種、キャリアパスを示すチャートである。ITスキル標準のキモはこのチャートにある。ITスキル標準はIT業界の職種、スキル、キャリアパス管理ツールのデファクトスタンダードになりつつあると言ってよいと思う。それについていろいろと議論はあるが、「情報処理技術者試験」以来行われてきたように技能を細かく認定していくことよりも、むしろ、職種と職種の間の関係、可能なキャリアの全体像を重視して、人材市場を確立することに主眼を置いた点で、ブレークスルーであったと思う。

建設業においても同様のものが今必要とされているのではないだろうか。それは次のようなものである必要があるだろう。

  • 最終的なキャリアゴールが見えるものであること。工事長=プロマネになって現場を張るというゴールだけではなく、IT技術者のキャリアが、プロマネ志向だけでなく、スーパープログラマ志向、アーキテクト志向、ビジネスプロセスコンサルタント志向、トレーナー志向や、品質管理者志向など多様なものでありうることを具体的に見せることに相当するものがあること。
  • 職種転換の可能性や多能工化を前提にすること。何が職種間の共通項であり、どの段階で何をすればどのような職種転換の可能性があるのか、ということを見えるようにすること。
  • 他業界の基準や国際的な基準に合わせること。キャリア段階の数や定義など。
  • 建設業界内、そして他業界との間の人材流動性を高めることに資するものであること。

(追記)
建設業に関する以前のエントリ 
http://blog.goo.ne.jp/nag0001/e/5fc2c408e1b1b2bd232df0951c1cee15



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