日経BP社が行った「コーポレート・メッセージ調査2006年」の調査結果の紹介記事である。どのようなコーポレート・メッセージが成功していると言えるのだろうか?そのコーポレート・メッセージを耳にして、
「企業名が浮かぶ」
「商品名が浮かぶ」
「その商品を使う情景が浮かぶ」
「その企業で働いている人達の姿が浮かぶ」
「その商品を買いに走りたくなる」
「その商品をもう一度見てみたくなる」
・・・等々の様々な成功尺度が考えられるが、本記事では「企業名想起率」が、代表的な成功指標としてあげられている。
さて、顧客であると従業員であるとを問わず人々に行動を起こしていただきたいと思った時に、キャッチコピーなどの端的なメッセージが果たす役割の重要性は言うまでもないが、ここで考えたことは、コーポレート・メッセージは会社の視点(=私達はこうだ)で作るのがいいのか、顧客の視点(=あなたにとってこうだ)で作るのがいいのか、どちらだろう?ということである。
やはり顧客の視点に立って、顧客にとっての効果や意味が直裁にイメージできるものが良いのではないだろうか?成功しているコーポレート・メッセージはきっと、顧客の視点で作られているに違いない。
・・・と思って、企業名想起率ランキングの1位~20位までにエントリしているコーポレート・メッセージがそれぞれ、顧客の視点で作られているか、会社の視点で作られているか、分類してみた。
- お口の恋人(ロッテ) ・・・顧客
- ココロも満タンに(コスモ石油) ・・・顧客
- あしたのもと(味の素) ・・・顧客
- うまい、やすい、はやい(吉野屋) ・・・顧客+会社
- 目も付けどころが、シャープでしょ(シャープ) ・・・会社
- Inspire the Next(日立) ・・・会社
- 安値世界一への挑戦(コジマ) ・・・会社+顧客
- I'm lovin'it(マクドナルド) ・・・顧客
- マチのほっとステーション(ローソン) ・・・顧客
- 自然と健康を科学する(ツムラ) ・・・会社
- 激安の殿堂(ドン・キホーテ) ・・・会社+顧客
- もっと乗りたくなる。ZOOM-ZOOM(ズーム・ズーム)(マツダ) ・・・顧客
- make it possible with canon(キヤノン) ・・・顧客+会社
- お金で買えない価値がある。買えるものはMasterCardで。(マスターカード) ・・・顧客
- The Document Company(富士ゼロックス) ・・・会社
- ヒューマン・ヘルスケア(エーザイ) ・・・会社
- 味ひとすじ 永谷園(永谷園) ・・・会社
- 清潔で美しくすこやかな毎日をめざして(花王) ・・・会社+顧客
- すべては、お客さまの「うまい!」のために(アサヒビール) ・・・会社
- SHIFT_(日産自動車) ・・・顧客+会社
・・・一つ一つ含蓄があるので、思わず20位まで全部打ち込んでしまったが、こうして見ると、顧客の視点で作っているものが多いとはいえ、意外と会社の視点で作っているものも多いんですね。特に電機業界とか。
良いコーポレートメッセージはどのようなものであるか?その模範解答は次のようなものになるのでしょうね。
顧客にとって商品体験が容易に喚起されるものであるとともに、会社の従業員にとっても、自分達が何を重視しなければならないかを明確に指し示すもの。
あるいは、
会社の価値観を示したものであるが、そのメッセージから想起される会社の姿勢がとても共感できるものであるので、その会社の商品やサービスならば信じてしまいたくなるようなもの。
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上記の20のコーポレート・メッセージで私が一番いいと思ったのは20番目の日産自動車のSHIFT_である。
なぜなら、これを聞く前と聞いた後では、こちらの経験の質が変わりそうだから。(顧客の視点)
また、設計者の人も生産ラインの人も販売の人も皆が、自分達がどのような価値を実現しなければならないかがわかりそうだから。(会社の視点)
いつも、SHIFT_ とイメージしながら車に乗ることができるようになれば、そしてSHIFT_ とイメージしながら生きることができるようになれば、多少値が張ったって、安いものだ。もっとも、SHIFT_ のイメージにモノがついてこなかったら、かえってフラストレーションがたまるかもしれないが。
SHIFT_ ・・・変ホ長調(Es-dur)のイメージ。SHIFT_ と目の前に貼っておこうか。それならば車を買わなくてもタダだ。