人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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「知識の全体像の俯瞰」「細分化した知の構造化」の必要性を日頃から主張しておられ、「教育再生会議」の委員を勤める、東京大学総長の小宮山宏氏のインタビュー。東京大学でも、2005年から「学術俯瞰講義」を始め、

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の6分野に分けて、それぞれの分野の全体像を最適な先生に講義してもらう、ということを始めているという。「異なる分野の統合が必要」ということは、ビジネスにおいても同じく言えることではあるが、「知識の俯瞰」「知識の構造化」がクリティカルな要因だろうか?構造化ができていないよりはできている方がいいだろうが、「構造化された知識」自体が価値を生むわけではないので、別の考え方をした方がよい。

商品開発にせよ、M&Aの企業統合にせよ、社会インフラシステム開発にせよ、問題解決のためには分野横断的に「知」を統合する力が必要であるが、そのために知識を俯瞰する教科書があればよいかというと、ないよりはあった方がよいだろうが、あったからといって問題が解決できるわけではない。「知の構造化」よりも「問題を解決する」ということに焦点がある。つまり、問題を解決しようとすれば、要因を体系化し、独立性の高いサブシステムに切り分けを行わなければならず、その中でおのずから、知識の構造化の必然性が立ち現れてくる。そこで初めて教科書的知識を参照しないと、何も身につかない。

問題によって、適した体系化の切り口も、必要な精粗のレベルも異なる。知識を予め固定的に体系的に構造化した教科書よりは、一つの問題がどのような要素から成り立っており、どのように解決されるか、ということをケーススタディとして学ぶ方がよい。たとえば、ビジネスという現象であれば、一つの企業変革の過程を記した「巨象は踊る」のようなものを、著者の視点に入り込んで理解して、その中に出てくる財務の要因、マーケティングの要因、ビジネスプロセスの要因、人材マネジメントの要因、技術の要因等を抜き出して関連づけてみる訓練などをすれば、絶対に役に立つ。もちろんできれば、自分で実際の問題に取り組んで解決にあたるのがよい。提案書を一つ作ってみること。「知識の構造化例」は、それにあたってのチェックリストのようなものとしてあればよい。

つまり、構造化された知識の前に、混沌としたものを切り分けようとする論理的思考が初めに来る。コンサルティング会社などでは、「論理的思考が全ての基礎」ということがコンセンサスになっており、まずそのようなトレーニングを行うところが多数派になっていると思うが、そのような認識が、他の一般企業や一般社会や学校においてコンセンサスになっているとは言い難いと思う。そのことをコンセンサスとして混沌を切り分ける訓練を行うことにすれば、知識の構造化はおのずからついてくる。フィンランドなどそうやっているようだ。



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