人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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Think! No.23(2007 AUTUMN) (23)

東洋経済新報社

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本日発売の東洋経済新報社の「実践的ビジネストレーニング誌 Think! 2007秋号」に寄稿を行ったので、同号について紹介します。(同号目次 http://www.toyokeizai.co.jp/mag/think/mokuji/20071022.html )

「ビジネスプロフェッショナルの編集力」という特集ですが、編集力とはイノベーション力に他ならないという見地から興味深いと言えます。というのも、今や、世界中で生み出される個々の要素技術/アイデアは多すぎ、かつ成功確率も不確定であるため、自社内でのブレークスルーにビジネスの成長を依存することは効果的でなく、むしろ自社技術にしろ他社技術にしろ、それらを組み合わせて価値を生む編集力を強化することが効果的になっている、と一般論として言えるからです。イノベーションという大テーマを「編集」というテーマに絞ることによって、取り組むべきイノベーションの課題が見えてくる可能性があります。

そのような視点から本特集号を読んでみることにしました。コンサルタントを初めとする論者が、「編集力」というお題を受けて論考を展開しています。現段階で何が提案されているか、比較しながら見てみることにしました。

記事を読むポイント

  1. その会社固有のどのような付加価値を反映しているか。
  2. どのような共通の手法やフレームワークを参照しているか。
  3. さらなる期待があるとしたら何か。

マッキンゼーの山梨氏

  1. あっと言わせるソリューションを出すことが求められるマッキンゼーならではの志を受け取った。次の指摘が即座に役立った。「具体的なアドバイスは2つ。目指す価値は、実現可能性に囚われすぎることなくハイレベルなもの、相当にチャレンジングなものとする。そして、それを具体的かつ完結に定義する。一言で言ってみる、あるいは一文で書いてみることをお勧めする。」また、「自分がコミットするものを面白がり、その新たな可能性にのめり込んでみようではないか。」
  2. 編集によって新たな可能性を追求するプロヴォカティブ・シンキング法を提案している。特に他分野のフレームワークをあてはめる比喩的な思考法。
  3. ここに紹介されている思考そのものは属人的なもの。その結果を組織的に実施に移すプロセスや、実施した結果を受けて組織的に知識を生み出していくプロセスを見たい。

ボストンコンサルティングの内田氏と滝波氏

  1. 所謂ウィキノミクスを「超編集」とコンセプト化し、多くの業界における応用例を探している。「超編集」は従来の自前主義を大きく超えた新しい働き方のパラダイムであるとし、積極的にその要素を取り込んで試行錯誤しよう、と提案している。
  2. 効果的に「超編集」がなされる前提条件としての、全体設計、モジュール設計、編集権限やルール設定の重要性について触れている。
  3. 「超編集」力を組織として活用する前提条件についての論が、本稿でもまだ緒についたばかりで、今後展開されるべきものだ。

ベイン・アンド・カンパニーの山本氏

  1. 個の編集力を組織の編集力へ結集できる集団のあり方について語っている。人が育ち、かつ有能な人材が自然に集う組織を語っている。「編集力を鍛えるテーマの彼方には、プロフェッショナルのスターを育て、活躍してもらう組織の構築がある。」
  2. 編集の作業の4つの工程としてフレームワーク化している。特に、仮説を最初に設定すること、及び比喩思考の重要性。
  3. 本稿だと「ビジネスエリートの仕事術」にとどまるので、その社会的な広がりについての考察が欲しい。新刊書ではそれがなされているのか。。。

日本教育大学院大学の高橋氏

  1. 発散と収束の技法を合理化した、ブレインライティング手法
  2. ブレークスルーするアイデアの創出とその編集の技法
  3. それを行った場合、単に従来型のブレーストーミングやKJ法を行った場合と比べて、本当にどれだけ生産性/アウトプット品質の違いが出るかはよくわからない。やってみなければ。。。

ベリングポイントの秦氏と越後氏

  1. 次が印象的。「議事録など会議の前に書いておけ」。「戦略コンサルタントの「編集」とは、実際の仕事や作業が始まる時点ではすでに終わっている」。
  2. 経営戦略の編集ツールとしての、バランスト・スコアカードと戦略マップ
  3. 紙でプレゼンテーションするのがゴールという想定だが、そんな筈はない。試行を経てフィードバックを得ながら改善していく過程がある筈である。それを知りたい。

IBMビジネスコンサルティングの金巻氏

  1. 戦略の構成要素が複雑に、速くなる一方の中で、編集するしかない、と言い切っている。世界は、姿形がお互いに違う宇宙人が一所に集う「スター・ウォーズの宇宙酒場」のようなものになりつつあり、その中で即座にお互いの理解を形成するためにはどうするか、という問題設定が印象的。
  2. 思考方法を帰納法と演繹法で説明。テンプレートには新しい3文字がついているが、従来から世の中にあるものと変わらない。
  3. 背景と実態は伝わるが、そこで勝つための手法や条件まで見えない。具体例を全く用いない説明はつらいが、流用されそうな情報は外に出さないIBMの方針なのかもしれない。

野村総合研究所の古川氏

  1. 「外交的で高気圧型のIT部門」の提案。それをITプロデューサと定義し、その役割とコンピテンシーのポイントを、いかに質の良い情報を集め、質の良い対話ができるかであるとし、ミッシングリンクとしての「人間力」の重要性を実感を込めて語っているのが興味深い。
  2. 手法やツールよりも、ヴィジョン、ミッション、能力・コンピテンシーの重要性に落とし込んでいる。なお、ヴィジョンはロードマップによって補完できるだろう。
  3. IT部門の課題と必要条件ではあっても十分条件ではない。決定技が何なのか、知りたい。

HRアドバンテージの南雲(私)

  1. ビジネスモデルの鳥瞰・編集から能力・コンピテンシーの鳥瞰・編集まで一貫してテンプレートで考えることを提案していることが新しいかもしれない。能力の編集にまで落とし込もうというのはHRに基軸を置くからだろう。
  2. よく知られた手法の応用の仕方に新しさがある。バランスト・スコアカードはビジネスモデルの鳥瞰手法として、CMMはロードマップ構築手法として、EAフレームワークはあらゆるプロジェクトの鳥瞰手法として。
  3. 能力の編集によって実際にどのような人材が出現しつつあるのか、その実例を見たい。

 

それぞれの視点をマージすることで良いものができてきそうだ、ということも言える。本特集の総括として論点のカバーマップを編集部で作成することは考えられるのではないか。なお、本号には、「本誌自体のブランディング」について論じている記事が含まれており興味深い。このような、自己再帰的な記事は歓迎である。単なる「読者の声」ではなく、きちんと分析がなされたものは好ましい。読者を、この雑誌を良くするためにどうしたらよいか、と、編集者や寄稿者と同じ土俵に巻き込んでいくことを意味する。そのこと自体がトレーニングである。その記事のメッセージにも納得。

 

以下は、私の寄稿内容の概要です。

編集の基礎となる鳥瞰力――全体を把握して、進む方向を見極める

フラット化した世界で戦うためには、自分だけのユニークな強みを発揮しなければならない。その鍵になるのが能力の編集力、すなわち、自分の強みを核としながら、関連する能力を組み合わせてビジネスの現場で発揮する力である。そのための前提となる能力が、ビジネスの全体状況を把握する「鳥瞰力」だ。鳥瞰力を、①ビジネスモデルの把握、②今後のアジェンダの予測、③プロジェクトの企画、④能力の編集、の4つのステップで発揮することで、状況をリードすることができる。そのための有益なフォーマットとその活用方法を紹介しよう。

【はじめに】 ビジネスを編集し、自己の能力も編集する
【ステップ1】 自社のビジネスモデルを鳥瞰する - バランスト・スコアカード
【ステップ2】 自社の今後のアジェンダを鳥瞰する -ロードマップ構築手法
【ステップ3】 プロジェクトを鳥瞰する - ザックマン・フレームワーク
【ステップ4】 自らの能力を鳥瞰し、編集する - コンピテンシーモデル
【おわりに】 編集力で次の時代を切り開く



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