人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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グローバル化、資本市場の要求強化、およびデジタル化とアウトソーシングの進展を受けて、また、そのような環境変化を反映させた改正会社法の施行を受けて、2007年はM&Aがこれまで以上に活発に行われると考えられる。・・・そのような、M&Aの展望についての特集記事。

M&Aは企業変革の不可欠のオプションとなった。ほとんどの業界のほとんどの主要企業は、企業内改革だけではなく、M&Aも視野に入れて企業改革を考える必要が出てきていると考えられる。これは言うまでもなく、企業の境界を超えてリソースの再配分が必要になっているからである。

  • 電機業界(とりわけ半導体など)のように、業界内でリソースを集結する必要がある場合もあるし、
  • 自動車業界(とりわけ電子系部品関係)のように、既存の業界の垣根を超えてリソースを集結する必要がある場合もある。
  • かつ、この2つは組み合わさっている。

ここで言うリソースとは、ほとんどの場合、「技術及び人材」である。つまり、M&Aの目的は、「技術及び人材」を、それらが最も価値を生み出しやすくなるように再配分することにある。M&A自体が目的ではないので、次の3つが使い分けられるべきであろう。

  1. 人材単位での移転 (転職・転籍)
  2. 技術単位での移転 (技術提携・売買)
  3. 会社単位での移転 (M&A)

M&Aによる場合には必要ではないリソースまで一緒くたに売買されることになる可能性があるため、M&Aは最後の手段になると考えられる。(財務諸表が揃っている企業単位の売買は価格をつけ易いため資本市場サイドは企業単位での売買を求めてくるとしても、本来の目的と異なってくる可能性が高い。)実際、自動車業界ではM&Aは一段落し、むしろ狙うリソースにピンポイントで焦点を当てた提携関係構築が主流になっているように思われる。

そうすると、M&Aを考える前になされるべきことがある。それは、「技術及び人材」を棚卸し、評価し、見えるようにすることである。そのためにはまずは、マネジメントのリーチが及ぶ各企業単位で「技術及び人材」を集結させる必要がある。イメージとしては、松下が「創生21」の過程において16の「技術プラットフォーム体制」によりグループ内の開発体制の集約を行ったようなイメージ。ただし、各企業単位の動きを待つことなくマネジメントのリーチを早く広く及ぼすことができるように、まずは持株会社形式で、従来の企業単位を超えたゆるい統合を目指していくことはありうるだろう。

そのように、「技術及び人材」の集約を行う過程では、集約のための「場」の設置や、用いる言葉の標準化が鍵になるため、学会や、業界ウォッチャー/アナリストや、(技術の標準化の担い手となる)公共部門や、また各企業の本社スタッフ/インフラ部門への期待も大きくなる。

また、M&Aがなされる前に、まずは人材単位での交流や移転が行われていなければならないと考える。というのも「技術及び人材」は見えにくい。ある事業を行っていたとしても(例えばデジタルカメラを作っていたとしても)、実際には様々な技術を外から買っている場合も多く、またあえて特許を出さない場合も多く、どのようなコンピテンスが組織に蓄積されているのかということは外からは見えづらい。相手にどれだけの実力があるのかということは、第一線の人材にしかわからない。学会で交流を持ったり、頻繁に人材が移動して情報を交換しあう中で、お互いの実力についてのコンセンサスが形成されてくる。シリコンバレーでも、もしそのような人的交流のインフラがなかったとしたら、M&Aは活発に行われてこなかっただろう。

いずれにしても、リソースの再配分が(国益等から見て)望ましい方向へ進んでいるか、ということを判断する上では、M&Aの状況のみならず、技術提携の状況や人材異動の状況をトータルで観察する必要がある。



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