日経ビジネスの4月7日号、「人材・技術・・・宝は社内にあり」という特集に島津製作所が出てくる。5期連続の増収増益、製品開発のハズレも少なくなったという。その背景には、「得意先から『見えないで困っているもの』を聞いてくるように」という服部社長の号令があったという。島津製作所の事業をそのように表現することで、それまで別々に遂行されていた事業間の相乗効果が生まれるようになってきたという。また、技術開発の段階であっても、最終製品化へのロードマップを作らせるようにしたという。「島津の各事業に見えないものを可視化するという共通項がある以上、その欠けている技術は社内で見つかる可能性が強い。社内に分散している技術を持ち寄り、同じゴールを目指して開発を進めれば、新しい「見えなかったものを可視化する市場が狙える可能性が高まる。」・・・とのこと。その仮説が、「病気の超早期診断」の市場で具体化しつつあるという。
島津製作所は何を変えたのか ・・・ 共通プロセスを設けたのであると解釈することができる。「見えないものを見えるようにする」・・・顧客への価値をこのように共通表現することで、事業や技術を超えて知識と知恵を持ち寄る共通言語と共通尺度の構築が始まる。そして次のような共通プロセスが認知されてきた可能性がある。
■感知(センサー)
■信号処理
■分析・計測
■結果の診断
さらに、このように工程を表現することで、その前後に次のような工程が存在しうること、その領域に手をうつべきことが見えてくるかもしれない。
□兆候把握・絞り込み
■感知(センサー)
■信号処理
■分析・計測
■結果の診断
□データベース化
□データサービス化
この共通プロセスに照らして、調達・強化されるべきリソースは何か、これから新しく開発されるべきものは何か、それらはいつまでにどのレベルで必要か・・・ということも見えてくる筈である。
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もう一つ、松下の「くらし研究所」という組織が、松下の白物家電のヒット商品創造のために有効に機能しているという。それは、実際のモデルハウスにおいて、生活場面のあらゆる測定、実験を行う研究所だという。
実際のモデルハウスとそこで生活する人が、全社共通の測定対象となることで、共通の価値・尺度が生まれる、と考えることができる。スペース効率、生活者の負荷の軽減など、そこにおける生活経験の向上に資するものであれば、あらゆる技術分野/事業分野から参入でき、その実験場において組み合わせることができ、その費用対効果を測定することができる。
記事で表現されているように、それは、「豊富な技術資産を結びつける「触媒機関」を通じて、潜在技術という自力を引き出す手法」であると考えることができる。
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