2006年のヒット商品ランキングのまとめ記事。一握りの企業が複数のヒット商品でランキング上位を占める傾向が認められるという。松下、キリンビール、シャープ、任天堂・・・。その現象を、「強者に共通するのは、・・・数年来の組織改革が実を結び、天才的な個人のひらめきだけに頼らない、着実なヒットを生み続ける組織へと舵を切った成果である」とまとめている。
- シャープの携帯電話 ―― 中核部品で進化する技術を、ライバルに先行して携帯電話に埋め込む。
- 資生堂のシャンプー ―― 目先の数字に右往左往して小手先の施策を打たず、マーケットに対してメッセージを集中投入することによって、ブランドを維持、構築する。そのためにブランドマネージャー+事業企画部による全体調整。
- 松下の白物家電 ―― 洗濯機、エアコン、掃除機の技術の相乗り。そのために、マーケティング本部が商品開発を統括し、旧事業部の壁超え。
- ダイハツの軽自動車 ―― プラットホーム(車台)の共通化の徹底と、顧客層に合わせたデザインへの注力。
- キリンの発砲酒 ―― 品切れを撲滅 ―― サプライチェーン全体で販売情報を共有、営業現場との意思統一。
その他、任天堂のDS、イケアの陳列、セブンイレブンの酸素缶、mixiなどのSNS、ジャンルを超えたマッシュアップ商品などが取り上げられている。
これらの中には既に日経ビジネス等で紹介されたことのある事例も含まれるし、それぞれの事例ごとに切り口が違うし、また、組織改革との関係は必ずしも明確ではなく、全体を統一する要素はつかみにくいのだが、あえて共通要素をまとめると、要するに「選択と集中」を可能にする組織であると言うことができると思われる。
もっとも、一言で「選択と集中」といっても、商品というコンセプト物は、蓋を開けてみるとその中には多岐にわたる要素や活動が相互に関連しあいながら詰まっているのであるから、一筋縄でいくものではない。次の1~4のそれぞれの(コンピタンスの)レイヤーにおいてまず「選択と集中」が行われつつ、
- 顧客接点/ブランド (ブランドの集約)
- 商品供給チェーン/プロセス (商品供給の集権化)
- 商品開発技術/プロセス (開発商品の絞込み)
- 基盤技術/プロセス (勝負技術の絞込み)
1~4を縦に串刺しにする出来事(イベント・・・すなわち商品開発であったり、販売であったり)もまた「選択と集中」の意思の元で行われている、と理解するとわかりやすい。
縦軸の出来事(イベント)の起点そしてコントローラーの役割を担うのは、
- ブランドマネージャーであったり、 ・・・資生堂はこれに近い
- サプライチェーンマネージャーであったり、 ・・・キリンはこれに近い
- 商品開発マネージャーであったり、 ・・・松下はこれに近い
- 基盤技術のリーダーであったり、 ・・・シャープはこれに近い
するのだが、そして1~4のどのレイヤーが起点となって出来事(イベント)をコントロールするか、というのは、1~4のどのレイヤーが全体のボトルネックになるかという、業界特性や各社の事情を反映させたものになるのだが、いずれにしても、縦・横両方の軸で「選択と集中」が行われている、と言って間違いないと思われる。
そこで問題になるのは様々な時間軸である。横軸の構築、すなわちコンピタンスの構築には時間がかかり、しかも1~4それぞれ独立性が高い。それに対して、縦軸の出来事(イベント)は短時間の中で動員がかけられて人々の行動を集約していくことになる。
だから、1~4の構築+縦の動員、をうまくタイミングを合わせて進めていくためには、洗練されたコミュニケーションが重要になる。それは、技術のロードマップに準拠する計画であったり、社内の縦横のワーキンググループの中での情報共有であったり、それを行いやすくするためのイントラネットであったりするかもしれないが、何よりも重要になってくるのは、メンバーの意識・無意識の中で共有されている事業ヴィジョンであったり、ブランド・プロポジションであったりすると思われる。