坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

関谷富貴の世界展

2011年05月05日 | 展覧会
各地域の公立美術館の役割の一つに、その地域ゆかりの画家、美術史的にも知られていない画家を発掘し光をあてることにあります。栃木県立美術館で開催中の本展はまさにそういった当館の学芸員の方々による資料収集の努力がみられる企画展です。
関谷富貴(1903-69)という画家をご存じの方はほとんどいらっしゃらないでしょう。栃木県、現在の那須町に生まれました。画家という活動自体も表舞台に立ったものではなく、日々の中で人知れず積み重ねられたものです、夫の関谷陽は二科展で活動を続けた画家で、その父親も日本画家という家系でした。
190点ほどの展覧の中で1950年代の作品が多く、掲載作品もその一点ですが、同時代に日本でも旋風を巻き起こしたアンフォルメル(不定形)に影響を受けた作風のように感じます。画面には赤と黒が縦横に走り内面の相克を表わすような激しいタッチがみられます。大きな躍動感も感じられます。クレー的な作風や童画的な自在な線の動きなど幅広い作調からは、固定概念に縛られない画家の鼓動が伝わってくるようです。

◆妻が遺した秘密の絵 関谷富貴の世界/開催中~6月19日/栃木県立美術館

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