坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

フェアリーな私的神話

2011年01月12日 | 展覧会
彫刻の歴史は日本では仏像に遡りますが、木彫の起源も古く、樹齢を重ねた樹木は古来から日本人にとって木霊が宿る神聖な対象として崇められてきました。現代まで木彫作品はヴァリエーション豊かに息づいています。土屋仁応さん(1977年~)も木彫の世界に新たな可能性と息吹を吹き込むアーティストの一人です。
掲載画像は、「麒麟」(PHOTO:HIROYUKI TAKENOUCHI)架空の神話的モチーフを題材に神秘的でどこかはかなさい命を感じさせる作品となっています。高さは30センチほどの作品ですが、独特の空気感を漂わせています。それはどこから来るのでしょう。
現実に存在しながらどこかフェアリーな鹿や麒麟、半人半馬、犬など神話と現実が交錯する曖昧な存在であるが、現代というバーチャルなリアリティを感じさせるということでしょうか。土屋さんは「集団の起源や文化の創造の過程を神聖なエピソードで彩った『神話』が今日まで語り継がれているのは、集団が誇りや絆を持つために必要だからなのだと思います。このことは民族や国のような大きな集団だけでなく、個々人やプライベートな人間関係のなかでも同じように作用するのではないかと思うのです。」と語っています。日本固有の文化を受け継ぎながら〈私的神話〉の世界は広がっていきます。

◆土屋仁応「私的神話」/1月18日~2月12日/MEGUMI OGITA GALLERY TEL 03-3248-3405

最新の画像もっと見る

コメントを投稿