坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

貴婦人と一角獣展

2013年04月09日 | 展覧会
一角獣(ユニコン)というと、ボルゲーゼ美術館収蔵のラファエロによる「一角獣を抱く貴婦人」が知られています。この作品は1933年に本格的な修復が開始されるまで、若い女性の腕には一角獣は見られなかったので、その点でも話題を呼びました。
この4月に開催される本展は、全長22mの六連作タピスリーが日本で初めて一挙公開されるということで、パリでご覧になった方も、待ち遠しい展覧会となるでしょう。
この6面のタピスリーでは、一角獣が重要な存在として登場します。
一角獣は、古代ローマの博物学者プリニウスの説明によると、体は馬に似て、鹿のような頭、象のような足、イノシシのような尻尾を持ち、一本のねじれた黒い角を額に生やしている凶暴な怪獣とされています。
この怪獣は、純潔と無邪気を愛し、童貞女だけがこの獣を捕まえることができます。
ユニコンが清らかな乙女のそばにうずくまる姿はキリスト教時代の絵画にもしばしばみられます。
掲載の作品は、「我が唯一の望み」と題されていますが、他の5面が、触覚、味覚、臭覚、聴覚、視覚と題され象徴的に表わされているのに対して、この作品は、どのような意味をもつのか、知性や愛、結婚などの説があり、謎めいています。
シンメトリックな構成で、赤を基調とした千花文様に青い天蓋が鮮やかに浮かび上がっています。
フランス国立クリュニー中世美術館の至宝といわれるゴブラン織りの精緻なタピスリーの美しさに目を引き付けられる展覧会となります。

◆貴婦人と一角獣展/4月24日~7月15日/国立新美術館

最新の画像もっと見る

コメントを投稿