坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

アーティスト・ファイル2013 現代の作家たち

2013年04月04日 | 展覧会
国立新美術館の研究員の方々による推薦されるアーティストによる個展形式の本展は、毎年、1月下旬から開催されます。
国や年齢を問わず出展される作品には、現代の混沌とした社会に真摯に向き合う姿勢が顕著です。
今年は、ダレン・アーモンド(ロンドン在住、1971年~)敬称略以下同様、東亭順(東京生まれ、現在バーゼル在住、1973年~)、チョン・ヨンドゥ(ソウル在住、1969年~)、利部志穂(神奈川県在住、1081年~)、國安孝昌(茨城県在住、1957年~)、ナリニ・マラニ(ムンバイ在住、1946年~)中澤英明(岐阜県在住、1955年~)、志賀理恵子(宮城県在住、1980年~)の8作家の展覧となりました。
全体的な印象は、原初的な生命や自然への眼差しがあるように感じました。絵画、写真、インスタレーションと形式や素材も多様でそれぞれ思索を重ねた深さを思わせます。
原始的なエネルギーというと、まず挙げられるのが、写真にアップした野外の作品にもあるような、國安孝昌の巨大なインスタレーションです。屋外での制作が主でしたが、今回は、当美術館の一室全体を使って、陶ブロックと丸太で積み上げられたらせん状が特徴的で、人為的な行為なのですが、丹念に積み重ねられていった時間の積み重ねがスケール感を生み出しています。
志賀理恵子は、写真のインスタレーションですが、壁面を使わず、床に立てかけられ通り抜けていく要素を採り入れていました。宮城県の北釜という土地に来て、5年間ここに住みながら制作しています。この地の歴史や風土を表現の磁場にして、きれいなものではなく、日本人の原初を訪ねていくような掘り下げた表現が印象に残りました。
ナリニ・マラニは、インド古来の神様やギリシャのヒロイン、グロテスクな人体、凶暴な動物。それらが美しく幻想的な光となって、灯篭のようなシリンダーに乗ってまわり、繰り返されていきます。そこには暴力、殺人、戦争などさまざまな問題が包括されています。

・アーティスト・ファイル2013 は、4月1日で終了しました。



ミッドタウンでは、アートとデザインのコンペで入賞した作品が通路を飾って楽しめました。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿