坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

保井智貴 古典と現代が交錯する人間像

2011年05月25日 | 展覧会
保井智貴さん(1974年~)は、興福寺の阿修羅像などに代表される乾漆という技法を用いて、数か月に及ぶ工程を経て独特の質感をつくりだしています。ベルギーで生まれイスラエルでも展覧会が開催されるなど他民族との接触が小さいときからあり、その固有の文化や人々の行動に関心を抱いてきました。
その一方で、日本の仏像には強い関心があり、奈良にはよく行ったそうです。そして大学に入る前からファッション雑誌や布ぎれなどに興味を抱いていたそうで、これまでもファッションデザイナーや建築家とコラボレーションしてきました。
「Tranquil Reflection」の本展では、半貴石、螺鈿、色漆、蒔絵、日本画の材料である岩絵具などで装飾された無国籍の衣服をまとった3体の人物をギャラリーに展示します。
伝統的な技法を現代に、異種混合的な人物像は、気高くまっすぐにその瞳を向けています。フィギュア的な今日性の面白さと伝統技法の確かさが放つひそやかなオーラが楽しみです。

◆保井智貴「Tranquil Reflection」/6月14日~7月2日/MEGUMI OGITA GALLERY

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