坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

猫の絵 長谷川潾二郎展

2010年06月07日 | 展覧会
画家の名前は分からないのだけど、この絵は見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。長谷川潾二郎(はせがわりんじろう)「猫」1966年(宮城県美術館)。平塚市美術館(神奈川)で今月の16日まで開催されている「長谷川潾二郎展」に出品されている作品で、「時計のある門(東京麻布天文台)」などの風景や花など、本格的に紹介される初めての回顧展です。今年の後半に3か所巡回されます。
いつものお気に入りの場所で満足げに寝入っている猫の姿。その表情、体全体に充足感があらわれています。こちらも少しにんまりとしてしまいます。長谷川潾二郎は戦前、戦後長く制作をつづけた画家ですが、中央の画壇とは距離を置き、独自のスタンスで平明な写実の世界を築きました。誇張のない、どちらかと言えば朴訥な表現で計算された構成ではなく、自由さ、余白が感じられます。この猫の作品は画面を深い赤のトーンとブルーグレーに分割し余白を生かし、猫の顔に焦点が行くように視点を誘導します。何気ない構成の中に画家としての眼力が光っています。
・下関市立美術館/7月1日~8月15日 ・北海道立函館美術館/8月28日~10月17日
・宮城県美術館/10月23日~12月19日

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