坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ゴッホの「アイリス」

2010年05月28日 | 展覧会
没後120年ゴッホ展がこの秋、国立新美術館を皮切りに来春にかけて九州国立博物館と名古屋市美術館で開催されることはお話しました。画家として生きた期間は10年ほどですが、その間デッサン、油彩を含めて量的にも物凄いエネルギーで制作に向かいました。
ゴッホの一番幸せな時期とされる南仏アルル時代の「ひまわり」は生命の象徴として描かれていますが、「アイリス」の主題も晩年の重要なモチーフとなっています。サン・レミの療養所で描いたこの作品は、最後にピークを迎えるゴッホ芸術の力動感のある線とみずみずしい緑と青が鮮烈に響きます。ちょうど今の時季に描いた作品です。波打つ曲線のリズムと一つ一つの量感、発作を繰り返しながらも描くことへの喜びにあふれています。
ゴッホ展に出品の「アイリス」は、花瓶に活けられ、黄色をバックに寒色のみずみずしさと力強さが全面にあふれ、見ごたえのある作品となっています。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿