美術ライター、編集の仕事を長年していると役得として、プレス内覧会の案内が届くことである。プレスリリースとともにそれぞれ工夫されたパンフを見るのも楽しみの一つ。フランク・ブラングィン展は、本展を実現させた源にもなっている〈松方幸次郎とブラングィンの運命の出会い〉という文字が踊る日本との関係を重視した内容のパンフで目を引くのは縦はハガキ大ほどのアコーディオン式になっている形状だ。インテリアの一部として飾っている。手元にあるもので目に付くのは、モーリス・ユトリロ展のパンフである。現在損保ジャパン東郷青児美術館で開催中で、エコール・ド・パリの華やかさとは裏腹にモンマルトルの街並みをどこか寂寥感漂う詩情を描いた画家として日本でも人気が高い。ユトリロのパンフは茶系のトーンを主体とした家並みの一角の作品を表と裏表紙でつないだもので、中身の構成も美しい。ルノワール展では大胆に横顔の少女の像に〈見るの〉に引っかけた〈ルノ〉という文字が鮮やかだ。巨匠の作品をいかに現代に引き寄せるか、デザイナーの手腕が大いに発揮される。通常では著作権の関係で無理である、作品のトリミングや裁ち落しなどがデザイン上許されている点も斬新なものにさせている。ところでブラングィン展では、「白鳥」の絵葉書を買った。これは2羽の白鳥が木陰に寄り添う構図だが画面にはみ出すような構図が面白い。白鳥の羽毛に木漏れ日と草花、装飾美を組み合わせた華やかな構成。その他の油絵作品は絵葉書ではその迫力が伝わってこない。色調の再現も絵ハガキは大量生産ということもあり難しい。ブラングィンの作品はとくにそれを感じさせるものがあった。
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