坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

レンブラント肖像画の油彩と銅版画作品の圧巻

2010年12月02日 | 展覧会
来年は印象派以前の17世紀を代表する巨匠の展覧会が注目されます。フェルメール展とほぼ同時期の初春に国立西洋美術館で開催されるレンブラント展も豊富な内容となっています。
昨日、主催する日本テレビのホールで記者会見があり、展覧の内容の紹介がありました。レンブラントは17世紀オランダの画家というよりその枠を超えて美術史上最も重要な画家のひとりで、自画像や神話画などに光と闇を探究し、近代的であり深淵な人間的なドラマを見いだせる画家です。
本展では1640、50年代の最も輝かしい業績を残した版画作品100点を中心に明暗表現の特徴を示す約15点の絵画と素描が展覧されます。その超絶技巧の銅版画(ドライポイント)は、デューラーのように線の細かい積み重ねによるものとは異なり、暗部を面的に表現した最初の画家とされています。まだまだ謎に包まれたレンブラントの技法と主題の数々。この展覧会では、版画に和紙を使って深みを出す研究がされたことをポイントに、同主題を洋紙で刷られた作品と並べて展示して比較していきます。そして銅版画の研究が油彩の明暗表現にいかに関わっていくかを問いかけます。
・掲載画像は、国立西洋美術館のキュレイターでありレンブラント研究者である幸福輝氏が出品作品を見ながら説明しているところです。画像では明確に見えませんが、「アトリエの画家」というレンブラント初期の作品で、本展の目玉の1点です。
簡素なアトリエの中央にキャンバスが立て掛けられ、若い画家が構想を練っている一瞬が描かれています。中央右側に逆光の表現で暗部を置き、左側の床がやや明るい色調になっています。初期の頃よりレンブラントの明暗表現への強い関心が伺われます。

◆「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」/11年3月12日~6月12日/国立西洋美術館
  6月25日~9月4日/名古屋市美術館

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