坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

舟越桂展

2011年09月14日 | 展覧会
彫刻家、舟越桂さん(1951年~)の人物像のトルソは、両性具有とも思える神秘性と固有のデフォルメによる新しい造形感覚で彫刻界に風を起こしてきました。
藝大の学生時代にトラピスト修道院から聖母子像を頼まれた折、先生から楠を使うように勧められたことがその後に繋がったといわれています。楠は古来から神聖なる樹木として崇められた経緯があり、舟越さんの木彫人物像の世界が形作られました。
80年代から楠に彩色し、大理石の目を嵌めこんだ着衣半身像から始まり、どちらかといえば静的な雰囲気から、より自由な発想へと拡張していったのが2000年頃からの裸体像です。
・掲載画像は、スフィンクスシリーズの参考作品ですが、肖像的なシリーズから半人半獣を思わせる不気味さ、不安定さを投げかける作品へと展開してきました。現代社会がイレギュラーに変奏していくように、作品もどこか痛々しさを伴うものへと変化していくようです。
右肩の上にのった手や胴部に添えられた手。手はロマネスクの神の手を思わせる予言の試みでしょうか。
舟越さんは、頭の中でのロジックな組み立てを創造の手掛かりにするのではなく、実際にデッサン、ドローイングを重ねながら全体の調和を考えていくようです。
本展は、最新作を含め、ドローイング作品30点が展覧されます。高知の北東に位置する香美市の自然豊かな景勝のなかで、舟越作品が新たな魅力を投げかけるのが楽しみです。

◆舟越桂展/10月1日~12月18日/香美市立美術館(高知県香美市)
 *舟越保武×舟越桂展/開催中~10月16日/旭川市彫刻美術館
  明治期に建造された荘重な雰囲気の同館で、親子展が実現しました。

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