坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

セザンヌ「赤いチョッキの少年」

2011年02月27日 | 展覧会
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展に出品されるポール・セザンヌの「赤いチョッキの少年」は、1888年から1890年の間に描いた連作のうち最も大きい作品です。このタイトルから、テーブルに肘をついた少年像を思い浮かべる人が多いと思いますが、この作品では、右手を腰にあてた立像になっています。この時期は、印象派に影響を受けた明るい色調のタッチとセザンヌ特有の画面構築への抽象化が段階的に進んでいきます。線から面への大胆な大きなタッチで、奥行きの浅い平坦な色面への実験的な姿勢が表れています。20年前に描かれたセザンヌが父親を描いた肖像画も出品されますので、画法の違いが一目でわかると思います。

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