坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

バーン=ジョーンズ 英国19世紀末に咲いた華

2012年08月24日 | 展覧会
厳しい残暑が続いています。美術展やギャラリー巡りも辿りつくまでにひと汗かくという感じですが、その空間に入っていくと一時暑さを忘れる別次元の世界へと浸されていきます。
19世紀後半のイギリスで活躍した世紀末絵画の代表的な画家、バーン=ジョーンズは、師ロセッティらが結成したラファエロ前派に属し、絵画のもつ物語性で引き込んでいきます。
三菱一号館美術館で開催され好評のうちに終了した本展は、兵庫県立美術館へと巡回されます。盛期ルネサンス以前の自然に忠実な絵画精神を目指して結成されたラファエロ前派は、後期になると次第に象徴性、装飾性を強め、ヨーロッパの象徴主義の画家たちに大きな影響をあたえました。中世文学や古代神話をイメージの源泉として、甘美で幻想に富む色彩豊かな独自の絵画を展開しました。
掲載作品は、「闘い・龍を退治する聖ゲオルギウス」1866年。
この作品は15世紀ヴェネツィア派カルパッチョの「聖ゲオルギウスと龍」から影響を受けて制作した連作の一作です。
「ピグマリオン」連作、「眠り姫」、「運命の車輪」などの油彩画の大作からタペストリや挿絵本にいたる約80点の作品で全貌に迫る日本で初めての本格的な個展となります。

◆バーン=ジョーンズ展/9月1日~10月14日/兵庫県立美術館(神戸市)