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坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

モディリアーニの傑作彫刻がアート市場を沸かせる

2010年07月27日 | アート全般
「おさげ髪」などの肖像画で知られるアメデオ・モディリアーニ(1884~1920)。彫刻家を志していたモディリアーニは多くの彫像も手掛け、自伝的映画「モンパルナスの灯」でもアパートから気に入らない彫刻作品を川に投げ込んでいたシーンを思い浮かべます。
現存する彫刻は27点あり、その1点のこの「頭部」はライムストーンでつくられています。掲載作品は、女性像の頭部の傑作と知られる石彫のレプリカです。実際は鋭角的な鋭い彫が浮き彫りにされています。この作品が5月のニューヨークのクリスティーズのピカソ作品の100億落札のニュースに続いて、6月のクリスティーズ・パリで48億円で落札されるという好景気のニュースが続きました。リーマン・ショックから1年半、それを乗り越えたような世界美術市場の活況を伝えます。

旭川市彫刻美術館の貴重な建築空間

2010年07月25日 | アート全般
旭川市彫刻美術館は、彫刻家の登竜門である中原悌二郎賞の受賞作家の展覧会や中原作品を含めて近現代の重要な彫刻家のコレクションで知られています。
私は、最近ではこのブログでも紹介しています保井智貴さんの受賞記念展のカタログを見て、現代彫刻と明治の洋風の建物の室内の建築構造との融合がとても気に入って、行ってみたい美術館の一つなのです。窓からの光の陰影がとてもいいのです。(行ったことがある方はぜひその印象をお知らせください)
・掲載作品は、羽根のついた椅子のシリーズで知られる深井隆さんの「逃れゆく思念」。
古代的神話へと時空を旅するような詩想へと誘います。
この美術館は旧旭川偕行社で、旧陸軍の将校たちの社交場として1902年(明治35年)に建設され、そのモダン建築は重要文化財指定を受け、美術館として公開されています。
旭川動物園に行かれたときにぜひ立ち寄ってみてください。

アンリ・マチスの金魚

2010年07月19日 | アート全般
水族館で熱帯魚を見たら、なぜか、マチスの金魚の作品を思い出しました。江戸の昔から金魚売りは夏の風物詩ですが、今は縁日やお祭りでついつい金魚すくいに目がいってしまいます。
マチスもまた赤い金魚をエキゾチックなオリエンタルなモチーフとして好んで描きました。
1910年代アトリエ内の「金魚と彫刻」を含めて金魚と観葉植物のシリーズを大きな色面のタッチで色鮮やかに描きました。原色息づくマチス独特の装飾豊かな画面構成となっています。

水族館で熱帯魚の色の魔術に見入る

2010年07月18日 | アート全般
関東は梅雨明けの連休、素晴らしいお天気に、美術館ではなく水族館に行ってきました。
きょうは、熱帯魚の色の美しさに魅了され、空は白い羽が大きく浮遊しているような雲の流れが美しく、真夏の光の中に自然の鮮やかな色の対照に抽象絵画をみるようでした(顔写真は筆者です。おまけです)

予想タコの砂の彫像は壊されるの?!

2010年07月12日 | アート全般
サッカー ワールドカップはスペインが優勝を飾り、日本代表も頑張りましたよね。
すばらしいゴールの数々も記憶に残りますが、決勝戦へと進むごとに予想タコくんの話題がニュースになりました。画像はヤフーニュースからの転送です。次々と試合の勝者を予想して的中率100%だったとか。それで決勝を盛り上げるためにインドの東部のブワネシュワルにボールとスペインとオランダの国旗、それにタコが乗っかっている砂の彫像が出現。
ちょっとキッチュなアートで面白いと思ったのですが、もう壊されているでしょうか。
こんなお茶目なアートもあっていいと思うのですが。

シャガールと蜂の巣の共同アパートの住人たち

2010年07月05日 | アート全般
ポンピドー・センター所蔵の「シャガール」展がオープンしました。戦時中の亡命先、アメリカでの赤い馬などの油彩画の大作も見ものですが、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場のためのモーツァルト歌劇「魔笛」の背景幕のシリーズ画は、シャガールの色彩と幻想の本質を語っているように思いました。シャガールはオペラにも精通していて本領発揮といったところでしょう。
若き日、ロシアのヴィテブスクから夢を追い求めてパリに出て、モンマルトルにかわって、芸術のメッカになりつつあったモンパルナスに落ち着きます。1902年彫刻家アルフレッド・ブーシェが「蜂の巣」(ラ・リュッシュ)のような円形の建物を建てます。貧しい芸術家の共同アパートとして、ヨーロッパのさまざまの国から来た若き芸術家たちが住みつき、新しい芸術の拠点となりました。シャガールの他に、住人だった顔ぶれは、アルキペンコ、ザッキン、ローランス、リプシッツ、スーティン、パスキン、モディリアニ、キスリングなど。
掲載の「婦人像」のキスリングはその中でもリーダー的な存在で、色彩的キュビスムといわれるコントラストの激しい色彩と簡潔なフォルムの独自の様式美を確立しました。彫刻家が多いのも特徴で、これだけの芸術家が同時期に揃ったのは奇跡的です。エコール・ド・パリの最も華やかな時代でした。

日本人はやはり富士山

2010年07月04日 | アート全般
富士山の山開きとなり、初登頂の日の出の美しい景色をニュースで見ました。
一年のほとんどを冠雪を頂く富士の稜線の優麗な姿は多くの画家を魅了してきました。
横山大観や林武の富士を思い浮かべる方も多いでしょう。最も伝統的で日本的なテーマであり、どの方角をとっても欠点が見つけられない端麗な姿ほど、絵描きにとっては描きにくい、料理しにくい点があるのです。それだけに富士を描くとその画家の力量がそのまま表れてくるということになります。
2年前に、103歳で歿した片岡球子さんは100歳でなお健筆をふるい、枯淡の境地などひっくり返すほど力動感が画面に息づいています。富士も球子流にデフォルメされ、錦絵のような鮮やかな色彩で、日本美術院の牽引力となりました。
あなたはどのような富士の絵がお好きですか。

世界初の陶板名画美術館(鳴門市)

2010年07月03日 | アート全般
大塚製薬グループが創立75周年記念事業として、徳島県鳴門市にこの4月に設立された「陶板名画美術館」。大鳴門橋を渡った鳴門公園の中に世界最大級の常設展示スペース(延べ床面積29,412㎡)を有し、古代壁画から現代絵画まで、世界名画1,000余点が、大塚陶業の特殊技術によってオリジナル作品と同じ大きさに複製されています。
ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂、ダ・ヴィンチの「モナリザ」、フェルメールの「青いターバンの少女」、ピカソの「ゲルニカ」など、また庭園内にはモネの「大睡蓮」が復元されているなど、時空と国を一挙に旅するミラクル空間となっています。
「陶板だから⋯」と思われるかもしれませんが、日本の技術の誇りだと思います。
一見にしかず、夏休みにご家族でお出かけになるにはいいかもしれません。

●大塚国際美術館(徳島県 鳴門市)
 http://www.o-museum.or.jp/


盗難被害のピカソの作品はどこに

2010年06月28日 | アート全般
モネがよく描いた駅はパリのサン・ラザール駅ですが、現在大規模な改築中のオルセー美術館が以前は鉄道の駅であったのは有名で、建築構造にその名残をとどめています。
パリ情報の続編です。5月20日に、パリ市立近代美術館からピカソ、マチスら巨匠の作品5点が盗難にあい、合計1億ドル以上の損失となりました。金額的なことはさておいて、世界的な文化遺産ですから、その所在が気にかかります。窃盗団は美術館裏側から窓を割って侵入し、額縁から丁寧に取り外して持っていったとか。
ピカソのキュビスム時代の代表作「鳩と小さなえんどう豆」など世界的に知られる作品ですから、市場マーケットに出ればそのルートはすぐ判明します。売ることもできない名作を前にじっくり鑑賞に浸っている? 謎は深まっていきます。

フリーマガジンの革命誌『Toriino』(トリーノ)

2010年06月23日 | アート全般
ビジュアルフリーマガジンの『Toriino』(トリーノ・季刊/日本野鳥の会発行)をご存じですか? 
6月18日に15号が発行され、創刊4年目の夏を迎えました。私はこの春号を最後に2年間、編集を担当させて頂き大変お世話になりました。哲学や美術にお詳しいA編集長、優しいお心遣いを頂いたスタッフのSさん、『Toriino』関係者様、本当にありがとうございました。私の方にも『Toriino』新刊号を送って頂き、変わらず会報『野鳥』誌も送って頂いて、ご縁を頂いてご一緒にお仕事をさせて頂いたことを感謝しています。
『Toriino』は、人と自然をテーマとした有名写真家の作品で構成されていて、動物写真家の岩合光昭さんのホットな写真などが掲載されています。藤原新也さんのちょっと辛口のエッセーも人気のコーナーです。(藤原先生はヒューマンな優しい方ですよ。最近は絵の他に書なども日々創作されています)
千変万化の神秘の表情を映し出す自然の魅力をそれぞれの作品は語っています。
〈野鳥も人も地球の仲間〉という日本野鳥の会さまのメッセージが伝わってきます。
全国の道の駅に設置されていて、公共施設、主要な美術館にも設置されていますので、ぜひお手に取って見てください。「え、これがフリーマガジンなの?」と、内容、デザインの質の高さに驚かされることと思います。表紙は平成の琳派といわれる石踊達哉先生です。
・個人的にも入手の手続きができると思いますので、下記アクセスをしてみてください。
私も野鳥好きですか?って、もちろんです。このお仕事のお蔭で国際生物多様性年のことやカンムリウミスズメのことちょとお話できるんですよ。

●問い合わせ先 日本野鳥の会 Tel 03-5436-2630
http://www.wbsj.org