
クジラの腹の中の海に浮かぶ島の家から出てきたのは、花のような髪型のじいさん、「クロッカス」さんだった。

双子岬の灯台守りをしている、71歳、双子座のAB型だ。
よく見ると、雲だと思われていたのは、じいさんがクジラの体内に描いた絵で、しかもクジラの胃の壁に鉄製の『出口』まで作られてあった。
その時、ドオン!!との大音響と共に、クジラの胃の中の海が大きく揺れだした。
「始めたか・・・」とクロッカスさんがつぶやいた。
あのクジラが、"レッドライン"に頭をぶつけ始めたのだと言う。

ナミ達はてっきり、クロッカスがクジラを体内から苦しめて、弱らせて殺す捕鯨方法かと思ったが、クジラを助ける義理もなく、とにかく、この大揺れの胃液の中からの脱出を考えた。
一方、『入口』からクジラの体内に入ったルフィも、この大揺れに振り回されていた。
クジラの体内には、クロッカスとルフィ達一味の他にも、招かれざる客が侵入していた。
その怪しい2人組は、胃袋への侵入タイミングを計っていたが、後方から投げ飛ばされてきたルフィに押し出される形で、胃袋の海へと飛び出した。

侵入者達を脇目に、じいさんは、急いでどこかへ行ってしまった。
クロッカスが向かったのは、クジラ体内の別の部屋で、そこにある巨大な注射器で体内から直接クジラに”鎮静剤”を打っていたのだ。
「やめろラブーン、もう自分を傷つけるのはやめろ、その壁は世界を分かつ壁。お前が死ぬまでぶつかろうとも砕けはせんのだ・・・・!!ラブーン。」
クジラは鎮静剤が効いて、ようやく止まったが、頭の傷はまた増えていた。

クジラが大人しくなり、元の静寂が戻った時、メリー号にはルフィと、怪しい男女二人組の三人が増えていた。
胃袋の海へ戻ってきたクロッカスは、侵入者に対して「私の目が黒いうちは、ラブーンに指一本触れさせんぞ!!」と怒鳴った。
男女はそれぞれに砲弾を取り出し、「この胃袋に穴を開ける!捕鯨の邪魔はさせない!!」と爆弾を撃った。
クロッカスは、自らその爆弾に体当たりして、クジラを守った。だが、砲弾はまだある!二人が2発目を撃とうとしたとき、ルフィが二人を殴って大人しくさせた。
ルフィ達は、あらためてクロッカスにクジラについて話を聞いた。
このクジラは、「アイランドクジラ」という、"西の海・ウェストブルー"にのみ生息する世界一大きい種のクジラで、名前を「ラブーン」といった。
これだけ大きいと、食料として常に捕鯨対象として狙われるので、クロッカスが守り続けていた。
クロッカスは、ラブーンが"レッドライン"にぶつかり続け、リヴァース・マウンテンに向かってほえ続ける理由を話して聞かせた。
「ある日、私がいつものように灯台守りをしていると、気にいい海賊達がリヴァース・マウンテンを下ってきた。そしてその船を追ってきたのが、まだ小さいクジラだったラブーンだ。
"西の海(ウェストブルー)"ではラブーンと一緒に旅をしてきたらしいが、"グランドライン"は危ないと、ウェストブルーに置いてきたはずだったが、ラブーンは仲間に離れず付いてきてしまったのだ。
本来、アイランドクジラは群れをなして泳ぐ動物で、ラブーンにとってその仲間は、その海賊達だった。

彼らの船が故障して、岬に数ヶ月停泊していたので、私も彼らとずいぶん仲良くなり、船長からラブーンを2~3年預かってくれるよう頼まれた。
『必ず世界を一周し、ここへ戻る』と。

ラブーンもその約束を理解し、私達はこの場所で彼らを待った。
あれから50年。ラブーンは仲間の生還を信じて、壁に体をぶつけ、壁に向かって吠え続けている・・。」
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